銃弾と共にーー生かされた命に感謝して

銃弾と共に
──生かされた命に感謝して


牧野省三(まきの よしかず)
四六判・176P
¥1,800+税

 この本は、愛媛県宇和島市吉田町に在住の牧野省三さん(68)が、半生を綴った自伝である。
 牧野さんはミカン農家だが、幼い頃、偶発的な事故で被弾し、摘出手術でも取り出すことができないまま成長し、今日に到るという経験を持つ。その期間は6歳から68歳まで、62年間という長期間にわたり、恐らく日本でもそのような経験を持つ人は大変珍しいのではないかと思われる。
 牧野さんがこの事実を書き始めたのは10年前からで、高齢になっていくに従い、さまざまな記憶がはっきりしているあいだに、被弾が人生にどう影響し、どのように生活を変えたのか、書き残しておきたいという気持ちから執筆が始まった。
 また、平成27年、生死に関わる大きな自動車事故を起こしたことも、その気持ちを確かなものにした。
 この本のテーマは、〝単に珍しい体験をした人〟ということではなく、体内の弾がいつ動くかもしれないという恐怖や不安を乗りこえ、人生に、常に前向きであり続けたという点にある。
 子どもの頃からの「大空を飛びたい!」という夢を実現するためにヘリコプターの操縦免許を取り、自動車事故による大ケガも懸命なリハビリによって乗りこえ、平成30年の西日本豪雨による被災にも負けることなく、再び家業のミカン栽培ができるまでになった。
 世の中には、不運に見舞われ、絶望して立ち直れないまま失意の人生を送る人もいるが、牧野さんは人生にさまざまな楽しみを見出し、奇跡的に助かった運命に感謝して生きている。こうした考え方が、多くの人に勇気や励ましを与えればと思う。

体内に銃弾がある……それは一体、どのような感覚なのだろう。

 幼い頃の偶発的な事故で被弾し、摘出手術を受けたにもかかわらず、取り出すことができないまま成長していった筆者。精神的に弱い人であれば、体内に弾が存在し続ける不安に耐えきれず、いつ、それが動くかもしれないという恐怖に苛さいなまれた違いない。
 しかし筆者は、人生に前向きであり続けた。子どもの頃からの大空を飛ぶ夢を実現し、自動車事故による大ケガも懸命なリハビリによって乗りこえ、再び家業のミカン栽培ができるまでになった。
 被弾から62年。現在68歳。「人生は楽しまなくては」。そして「感謝して生きよう」と、さまざまな喜びを見出す筆者に、脱帽だ‼

昭和26(1951)年 
  愛媛県宇和島市吉田町の赤松家に、次男として生まれる。
昭和32年秋
  被弾。その後、摘出手術を受けるが、弾は取り出せないままとなる。
昭和45年
  愛媛県立吉田高等学校工業科を卒業後、神奈川県の金属表面処理会社に就職。
昭和48年  三重県の本田技研工業株式会社鈴鹿製作所に転職。
昭和55年  結婚により牧野姓に。
平成元年  ヘリコプターの操縦資格を取得。
平成6年  帰郷し、みかん農家として再出発。
平成27年  高速道路において衝突事故を起こし、重傷を負う。
   以後、懸命なリハビリにより、元の生活ができるまでに回復。

アトラス出版 〒790-0023 愛媛県松山市末広町18-8
TEL 089-932-8131 FAX 089-932-8131