出版に携わる人で図書館のお世話にならない人は、まずいないといっていいだろう。私の場合、県立図書館を利用することが多いが、長年利用してきて思うのは、ずいぶん調べやすくなったなということである。
以前は何か調べようと思えば、なんとなくアタリをつけて関連本をたくさん棚から引っ張り出し、時には書庫からも出してもらって片っ端から見ていき、ようやく目的の本にたどりついた。だが今はパソコンで蔵書検索をすると、正確な書名を入れなくてもキーワードだけでたくさんの本が出てくるし、雑誌や郷土史などの小冊子に書かれたものまでわかる。蔵書検索は自宅でもできるから、持出禁止の本だけ図書館で見てコピーして帰り、ほかはパパッと中身を見て借りて帰る。時間が有効に使えるので、忙しいときは実に有り難い。また郷土資料は大半が開架式になり、どんな本があるのか一目瞭然になった。
図書館の最高峰といえば、やはり東京の国立国会図書館だが、私はここへも調べものに行ったことがある。「利用者登録証」というのをあらかじめ作っての入館である。図書館のスペースも広かったが、なにしろ蔵書数が膨大なので、入り口近くに並んでいるパソコンの数もハンパではない。しかも調べものをしている人のキーボードに打ち込むスピードが滅茶苦茶速かったので、いささか気圧(けお)された。コピーを取るのは、何人ものアルバイトがそればかりしているのだが、申し込む人と枚数がこれもハンパなく多いので時間待ちをしなければならず、電光掲示板に自分の番号が出てくれば取りにいってお金を払う。行く前はなんとなく恐れ多い図書館みたいに思っていたが、何回か通う内に慣れた。
最近は、国立国会図書館のサイトで、著作権の切れた昔の本をインターネット公開しているので、画面で見ながら調べものをするようになった。肖像写真や昔の風景写真なども、申請して許可が出れば本に掲載できる。地方で出版をするデメリットはだんだん少なくなり、「こういうのをユビキタス社会というのだろうか」と実感しているのだが、私の目がネット依存症並みのドライアイになったのだけは困っている。(2013.3.1掲載) |