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『枝雀のリズム』

昭和59年卒 冨永幸伸(らくさぶろう)

落語に出逢って、もう何年になるだろう?
高校時代は、「音楽でやっていくんだ!」と大きな事を言って、ブラス漬けの日々を送ったワタクシ(ただ勉強しなかっただけですが)。
1年上の女性の先輩が愛媛大学に合格され、オチケンなるものに入部したという噂。
オチケンって、あの落語やるとこ?
えええええっ、あの先輩がっ???と、ビックリしたものだ。

まさか自分がやることになろうとは。

ワタクシは東京の大学に入り、それなりに音楽を勉強していた。
その時は一度も寄席へ行ったこともなかったし、落語よりは当時の漫才ブームに興味があり、『花王名人劇場』はいつも録画をしてたっけなぁ。
その録画してた中に、漫才に混じってたまーーに落語もあったんですね。
『上方の爆笑王!桂枝雀登場!!』という回があって、なんとなく観てたら・・・
これがビックリ、面白い。
今まで抱いてた落語のイメージががらがらと音を立てて崩れていった瞬間だった。

『茶漬けえんま』という新作落語だったが、ぐいぐいと引き込むその力にワタクシはノックダウン。
気がつけば枝雀信者になっていた。

諸事情あって松山へ帰り愛媛大学に入学。
でも落研に入るつもりはなかった。
まだそのときは“落語を聴いて楽しむ”というスタンスだったから。
しかしあるとき、自分でも忘れちゃってるんだけど、何故か「やってみたい!」という衝動に駆られ、そのとき愛大でやっれおられたある先輩を訪ねたのが始まり。

そこから正式に落研に入部、音楽の勉強より落語ばかり勉強する日々。
これじゃぁいかんと、わかっちゃいるけどやめられない。

枝雀さんが今治に来れば追いかけていき、国民文化祭に出場するために埼玉まで行ったり。
枝雀さんのお弟子さん『雀三郎』師に弟子入りを考え・・・。

まぁ、今は地元でこんな仕事やっておりますが、基本にこの落語との出会いがあると思ってます。
でも、落語は聴けば聴くほど、やればやるほど、音楽に近いということがわかってくる。
何が?という“これ!”みたいなものは無いんだけど、流れであったり、音色であったり、テンポであったり。
そして特に枝雀さんの落語で感じるのが、リズム、なのですよ。

心地よいリズム。
オチへ近づく部分の高揚感、そして最後の爽快感。
別に泣ける噺ではないのに、聴いたあとに泣いてる自分がいたりします。

指揮者の佐渡裕氏も枝雀師の大ファンという。
ダイナミックな指揮ぶりは、どことなく枝雀師の落語に近い気もする。

枝雀師が亡くなってもう何年だろう。
やはり師の『たちぎれ線香』が一度聴いてみたかった。




 



  

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