◎Healthy People 2000(米国)

Healthy People 2000”(米国)から

−新居浜小児科医会の話題(平成10年3月18日)

1.はじめに
 過日、某先生から、標記計画の邦訳を頂戴した。早速、予てから興味のある「たばこ対策」を中心に目を通した。
 これは1990年に発表されたもので、米国が西暦2000年までに達成すべき国民の健康増進、健康保護、疾病予防目標を、根本的目標(22項目)、具体的目標(300項目)に分け、それぞれの項目毎に数値を掲げている。
 たばこ対策については、米国政府は数値目標を掲げ、積極的に取り組んでいることは知っていたが、国民の健康全体について、このような計画があるとはそれまで全く知らなかった。
 邦訳であるので、その英語版をみたいという欲望に駆られ、早速インターネットで検索してみたところ、関連の資料があることが分った。調べてみると、毎年そのReviewが発行されていた。そのうち、本日ご紹介のReviewは中間点の1995、6年のものである。
 一方、わが国でも、平成8年12月来、生活習慣病対策が話題になり、一次予防の重要性が謳われ始めたが、本年の厚生省予算の中に、「健康日本21(仮称)総合戦略事業:新規−1,000万円」があることを初めて知った。
 これは、1999年までに「健康日本21」を策定し、2000年から2010年までの10年間にその数値目標達成に向けて努力する、ということである。
 本年(1998年)1月20、21両日に開かれた全国厚生関係部局長会議で、小林保健医療局長がこの計画について、「欧米では既に取り組まれているが日本では初めてだ。国民が生活習慣を変えることも重要で、行政のサポートも重要だ。米国でも計画策定に3年をかけた。関係省庁と連携して作業していく。」と述べている。
 同時に、本年度予算に「たばこ対策推進事業:新規−4,300万円」があるが、同局長は、「平成7年3月に報告書がまとめられている。厚生省は、@未成年者の喫煙防止、A受動喫煙の害を排除・減少させるための環境づくり、B禁煙サポート及び節度ある禁煙、の三点を柱としている。今後もこれを進めていきたい。」と述べている。
 過日発足した「21世紀のたばこ対策検討会」−保健医療局長の私的検討会−もその一環として設置されたものである。

2.Healthy People 2000 Review, 1995-96 Shows Progress in Almost Half of Objectives

Highlights of the Review(総括)

 @本計画は1990年に策定されたが、’95、6年の中間時点で策定項目の8%が目標値に達しており、40%が達成に近づいている。しかしながら、18%が目標値を外れ、5%が上下し、3%は変化を示していない。残りの25%余りは、基準値あるいはその後のデータが利用できず、判定できない。
 A優先項目(22項目)のうち、最も成果を挙げているのは心疾患、脳卒中、がんである。また、不慮の傷害は、個々の具体的項目の65%以上で成果を挙げている。
 B年齢調整を行った冠動脈疾患による死亡率は、1987年から1993年の6年間に、16%減少し、脳卒中死亡率も12%減少した。
心血管疾患の主なリスクファクターは改善されており、自分の血圧値を知っている人の割合も増加した。コレステロール値を測定した人も増え、コレステロール値も低下してきている。
一方、成人過体重は、成人人口の四分の一から三分の一に増加している。多くの人が中等度乃至強度の運動をしているが、なお四分の一の人は全く運動をしていない。
 C改善が最も遅れている項目は、糖尿病、他の慢性障害、職業の安全と健康、身体活動、精神保健と精神障害、それに暴力と虐待行動であり、それぞれにおいて、具体的項目の四分の一以上で目標値を外れている。
 D1986年から1993年の間に、年齢調整後の糖尿病関連疾患による死亡率は、アメリカ人全体で5%増加し、アメリカインディアンとアラスカ原住民では30%、黒人では10%増加している。
 E1991年以来、慢性障害のため、活発な活動を避けている人の割合が増えて来ている。
 F少数民族は、全アメリカ人と同じような改善傾向を示しているが、全然改善しなかったり、悪化している率が高い。また乳児死亡率も際立って高く、そのギャップは広がっている。

参考Healthy People 2000:progress review

     1.tobacco
     2.maternal and infant health
     3.immunization and infectious diseases

おわりに

 「健康日本21」の領域別の目標は、@若年死亡の減少、A痴呆や寝たきりにならない状態で生活できる期間の延長、B生活の質の向上−などが想定されている。

(平成10年3月)

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