(社)日本小児科学会

こどもの受動喫煙を減らすための提言

日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会

1.受動喫煙とは

 たばこの煙には、先端から立ち上がる副流煙、喫煙者の吐き出す煙があります。こどもの喫煙のほとんどは、これらを吸う受動喫煙です。こどもの受動喫煙で、気道アレルギーが悪化して、ぜんそくが治りにくくなったり、乳幼児突然死症候群(SIDS)が増えるなどの健康影響が報告されています。

2.たばこの煙の性質 

 たばこの煙は直径1ミクロン以下の非常に小さな粒子です。あまりに小さいため、気流とともに浮遊します。粒子は活性炭や繊維製品、肺、など微小な空間を通る時に多く吸着されますが、壁や天井など平坦な表面にはあまり沈着しません。
 閉鎖された室内では、たばこの煙は数分後には部屋全体に広がって薄められ、見えなくなります。しかし、沈着はごく一部だけで、粒子の大半は長時間にわたって空気中に滞留しています。従って、短時間に室内空気を清浄にするには、気流ごと、たばこの煙を室外に出す、つまり窓を開けて換気するのが最も効果的です。

3.こどもの受動喫煙


 こどもの受動喫煙といえば、家族が吸っているたばこの煙を直接、吸い込むことだけを考えがちです。その結果、こどもの前でたばこを吸わなければ受動喫煙を減らせると誤解されています。しかし、受動喫煙の大半は、室内空気中に滞留している、たばこの煙を知らず知らず、長時間にわたって吸うことによって起きています。閉め切った部屋では、目に見えず、煙たさを感じなくても、たばこの煙は空気中に滞留しています。とくに今日の住宅はエネルギーの節約のため気密性が高く、この状態が長く続きます。こどもが家に帰ってきて、こうした部屋で数時間過ごしたとすると、直接、喫煙者の側にいてたばこの煙を吸ったのと同じ、場合によってはその何倍もの煙を吸うことになります。
 こどもの受動喫煙への影響は、他の家族より母覿の喫煙が大きいとの調査結果があります。母覿は家庭内にいる時間が長いため、と考えられます。また、こどもが不在の時に吸うたばこの煙に注意が行かず、閉め切ったままでこどもを迎えることも、子どもの受動喫煙量を増やしています。

4.こどもの受動喫煙を減らすための提言

 受動喫煙を減らすには家族の禁煙に越したことはありません。しかし、それができなくても、たばこの煙の性質や家庭の喫煙状況から、こどもの受動喫煙を減らすことができます。私たちは、次の2点を国民の皆さんに提言します。
 @受動喫煙を避けるため、こどものいる家庭では、たばこは室内で吸わず、屋外で吸うようにしましょう。
 A室内で吸った場合、必ず、窓を開けて換気しましょう。とくに対面する2か所の窓を開けて自然換気するのが効果的です。
 
          
      

 【橋本正史、片岡直樹、高橋香代、田中哲郎、田辺 功、富田和巳、村田芳子、谷村雅子(副委員長)、杉原茂孝(委員長)、安田 正(担当理事)、清野佳紀(同)】

日本小児科学会雑誌:2002年3月号から)


 

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