A LETTER FROM AMERICAN HONDA

FOR ALL OF XR650R OWNERS

By BRUCE OGILVIE

すべてのXR650Rバイヤーに向けてのTECH CHIP 20!

ブルースオグリビー。元アメリカホンダのプロフェッショナルライダーであり、SCORE BAJA1000で、
7度に及ぶ優勝を達成。また彼は70年代、80年代、そして90年代の3世代を通して
総合優勝を成し遂げた僅か2人のライダーの中の一人に数え上げられる、といった輝かしい経歴を持つ。
ブルースは現在、アメリカンホンダ-R&Dの重要な一員としてマシン開発とレースサポートに従事。
昨年デビューしたXR650Rは、彼が長年に渡る豊富なレース経験を基に、そのノウハウのすべてを注ぎ込み
苦難の末、新世紀へ向けて送り出した、いわば虎の子の一台である。
故アルベーカーと同じく、XRに魅せられXRと共に人生を歩んできたブルースが
今後どのような変遷と進化を我らのXRに展開してくれるのか、とても楽しみである。
(写真上)86年のBAJA1000で勝利を飾ったXR600RG。彼は昨年、デビューから15年を経た
このツインキャブXR(BIG-FINNED)でネバダラリーに参戦。
全盛の往時と変わらぬ速さでトップクラスの若手ライダー達を瞠目させた。

フルレース仕様のプロフェッショナルレベルのライダーに向けて

その1)
右側のフットステップのブラケットの取付けボルトが緩みやすいため、500KM毎に
締め付けの確認を行うこと。
その2)
BAJA1000等のSCOREイベントレースでは2次側のギヤ比はフロント14T,リヤ45T
もしくは15-47Tの設定を推薦したい。スムーズなパワー特性とリヤホイルを前側に移動
できるためである。また14-52Tの設定はウッズなどで非常に扱いやすい低速トルクを発揮できる。
(USAモデルのノーマルギヤ比は14−48)
その3)

燃料コックをはずし、真鍮製のリザーブパイプを取り外し”ON”の状態でレースを行うこと。
(訳者:注)ガスが予備近くまで減ってくると供給が不安定になるためと推察。
 

その4)
ムースタイヤは使用しないこと。ムースはサスペンションやフレームへの負担が
大きくなりすぎる。ヘビーチューブを推薦する。
その5)
ノーマルタンクでのレース参加の場合は、タンクキャップ部内側の白いプラスチック製の
インナーをはずしておくこと。HONDAのピットでクイックチャージャーの
サービスが受けられる。

すべてのXR650Rバイヤーに向けてのアドバイス

その1)
エアーフィルターが左側サイドパネルによって、しっかり押さえられている事を常時確認する。
特に前部のロア側のクリップに充分なテンションがあるか、チェックする事。
ブーツやその他のインパクトでダメージを受けるとテンションが落ちて、カバーの押さえが
甘くなり、その部分からダストの吸い込みを起こしやすい。”B TO V”(注:バーストツーベガス)
のレースで、ジョニーキャンベルはこの左のサイドカバーの落下に気付かず走行を続け、
HONDAピットで初めてそれを知らされるといったハプニングに見舞われた。
その2)
規定のオイル容量を保つことに注意を払う事。例えばXR650Rの場合、0,5L少ないと
それは全容量の25%以上に値する。計り方はエンジン停止後、20〜30秒以内に
ディップスティックでの目盛りに準じて速やかに行う。またレース中は、
アイドリング状態でスティックを差し込み、計量してもOKである。
(訳者:注)間違っても一晩置いた状態で計らないこと。これやると規定より1L位余計に
入ってしまいます。

その3)
XR650Rのパワーを引き出すためにはレギュラーガスを入れること。ハイオクタンガスは
圧縮比が高く設定されたエンジンにのみ有効である。ホンダピットでは、
オクタン価92〜93のVP製ガスをチャージしている。
その4)
スウィングアームとのクリヤランスが許す限り、リヤホイルを前に位置するように
ギヤ比を設定すること。
コーナリングの旋回性が向上し、ハンドリングもよりベターで、作動がより安定する。
その5)
XR650Rはビッグトルクを発生するので、チェーンは必ずノーマルと同じのエンドレスタイプを
使用すること。クリップタイプは必然的にトラブルの発生を招く。
その6)
HONDAではD.I.Dの「520 ERV2」というOリングタイプのエンドレスを純正部品として

販売している。(部番:DID520ERV2-120)。AMERICAN HONDAでは1994の
レースから、このグレードのチェーンを採用している。また、ノーマルのXR650のチェーンは
通常のERV2と同等かそれ以上の耐久性と強度を保持している。
その7)
リヤフェンダーの取付けボルトが緩みやすいので要チェック。
アンチロックの溶剤で再度締め直すこと。
その8)
キャブレターのチョークプレートの取付けスプリングをチェックすること。これが金属疲労等で
破損している場合、スプリング及びプレートがインテークポートに吸い込まれ、重大なトラブルを
引き起こすことになる。現在、直ちに施せる適切な処置としてはプレートとスプリングを
取り外してしまうという方法がある。それでも冷間時、エンジンは3回のキックで目覚めて
くれるはずだ。
またホンダが把握したところの、この破損を招く最大の原因として考えられるのが、ハーフ
チョークの状態のまま、エンジンを比較的ながくかけておくという使い方を繰り返した場合である。
その9)
オーナズマニュアルの予備タンク容量には誤りがある。0.53ガロンが実際的に正しい
数値である。
その10)
リヤホイルにビートストッパーを1個付け足すこと。1気圧程度の空気圧では
XR650Rの強大なトルク発生によってリムとタイヤのズレを起こす。
その11)
初期のゆるみ修正を調整した後、ステンレスワイヤーでスポークがクロスした箇所を
前後ホイルともロックアップすること。
その12)
使用中にラジエター液をボイルさせたことがあるユーザーはノーマルラジエターキャップ
(1,1kg/Cu)からKAWASAKIのKX80に使われているキャップ(1,6kg/Cu)(訳者注1)
への交換を推薦したい。(訳者注:液体は加圧されるほどその沸点が高くなる)
この変更のマイナス面としてはホース部やフィッティング部分に多少の負担が増える事で
あるが、水冷エンジンはもともと冷却フィン部に通風がない状態では、ボイルするように
設計されているので、心配はいらない。そのためにリザーバータンクがある。
ボイルは水冷エンジンにおける、エンジンが決定的なダメージを受ける前の予兆というより
水冷特有の 単なる現象であると認識してほしい。
一般的によくある誤解であるが、決してエンジンのオーバーヒートと混同してはいけない。
(訳者注1:当社で調べたところ、このキャップの部番は49085−1059です。実はKMX125用 。
 KX80用とか、ホンダさんに注文したりしないこと!)
(訳者注2;空冷エンジンにはこのボイルのサインがないので油温計などの装備が必要)


その13)
BAJA1000のレースでHONDAチームは、このラジエターキャップの装着と軽量化を
兼ねてリザーバータンクを取り外し、また冷却水の流れをよくするため、サーモスタットも
使っていない。これによってより本格的なアグレッシブ走行が可能になる。しかし
アベレージライダーにはあまりお薦めできない方法であるかもしれない。
その14)
HRCのパワーアップキットはカムシャフトとハイコンプピストン、強化されたカムチェン
によって10馬力以上の出力アップを発揮している。これはJOHNNY CAMBELLの
マシンと同じ設定である
その15)
ホンダチームはチェンガイドに手を加えていない。何故ならポリプロピレンは衝撃を
しなやかに吸収し、金属製のガイドのように折れ曲がったりしないからだ。
(訳者注:では何故、CRとかCRFにはアルミ製のガードが付いているんだろう?
 私は冬場に林道を走行中、前輪が跳ねた石でこのポリプロガイドが根元から破損し、
 ガイドごとチェーンの上を半周したあとフロントのスプロケットでロックしたことがあります。
 しなやかなのは気候が温暖なCA.だけ?)

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