啓蒙オフ新聞 VOL. 2   発行人:(有)マルカワレーシング
  編集人:魔留華倭よいち
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BORN TO BE WILD(ワイルドで行こう!)
その時、私はまだ17歳になったばかりの少年だった。
足元にはYAMAHA AT−1の2ストロークエンジンが全速で
甲高い悲鳴のような唸りをあげていた。ハンドルのミラーに写った
青白い排気煙の遥か後方では一台の白バイが鬼気迫る
勢いで追跡を開始していた。町外れの交差点で、
一時停止を怠ったのが事の始まりだった。対抗車線から
突然現れた白バイから停止を促されたにも関わらず、
何故か私は反射的に逃げてしまったのである。普段の自分
なら当然、素直に引き返している。その時はたまたま
魔がさしたとしか言いようがない。
おそらく彼はどこかの建物の影に隠れて”獲物”がやってくるのを待っていたのだろう。
私は制止を無視して、すぐさまギヤをトップに入れると、上体を伏せてフル加速の体勢に入った。
その途端、頭の中が真っ白になった。心臓が早鐘のように打ち、喉がカラカラに渇いて吐きそうだった。
この時の私の心理状態を喩えて言うなら、まさに、「ライオンに追われるトムソンガゼル」であったろう。
しかし、もういまさら逡巡しても手遅れだ。スロットルを目一杯に捻りながら、
私はほとんどパニックになった頭のなかの、僅かに冴えた部分で逃走径路を模索し始めた。
「ここからすぐ近くにある、峠越えの国道に入れば、逃げ切れるかもしれない」と私は思った。
当時、隣町に繋がる国道のほとんどがホコリ止めのニガリを巻いただけの、実にお粗末な土の舗装路
だった。しかも私が乗っていたこの「AT−1」は、今をときめく”本格派トレール”であり、オフ路面においては
白バイとは比較にならない抜群の走破性を誇っていたのである。逃走を成功させる、それが唯一の切り札だった。
「途中の脇道から走り慣れたあの険しい山道に逃げ込めば、いくら腕が立つ白バイ乗りでも追跡を
諦めるだろう」私はそう確信すると、いくらか冷静さを取り戻し、体を駆け巡る血液にも小さな灯がともり始めた。
そして、いよいよ土の舗装路に入ると俄然、元気が出てきた。
「落ち着け!絶対に転ぶな!ここで転んだらおしまいだ!」と、はやる気持ちを抑えるように自分を
叱咤しながら、懸命にハンドルを操った。白バイの爆音は私のすぐ背後に迫っていた。
「ここからは俺のもんだ、来るなら来い、ぶっちぎってやる!」
私は軽快に後輪をスライドさせながら、水を得た魚のように次々とコーナーをクリヤーしていった。
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しかし結末は実にあっけなく訪れたのである。
山道に入る手前のコーナーで、突然の深い砂利に前輪をとられ、私は道路脇までバイクもろとも
吹っ飛んでしまったのである。万事休す、一巻の終わりだ。膝を強打しただけで怪我はなかったが、
私は遂に観念した。立ち上がると同時に、駆け寄ってきた白バイ警官の怒声が響いた。
「お前、逃げたな!警察をなめとるんか!免許証を見せろ!」年季の入った、凄まじい声だった。
私は恐ろしさと悔しさで言葉もなく、立っているのがやっとの状態だった。
「退学」という文字が頭の中で大きく広がりながら渦巻き、激しい後悔の念に襲われた。
私は後ろポケットから、紺色のビニールの折りたたみに入った免許証を、震える手で差し出した。
内容を確認すると彼はいきなり、「お前は駅前の丸川の息子か!親父の年はなんぼだ!」と言った。
意表を突かれて私は返答に窮した。それを見た彼は、まさに怒髪天を突く勢いというべきか、
物凄い剣幕で「貴様、親の歳も知らんのか!」と怒鳴りはじめた。
いま考えてみると、かなり偏った尋問であったに違いないが、その頃の時代的なものとしか言いようがない。
彼にとっては、交通違反はもとより、高校生にもなって自分の親父の歳も即答できないと言う「親不孝」の方が、
許せないことらしかった。長い叱責が始まった。私はただ終始うなだれたまま、”すみません”を連発した。
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万が一の再度の逃走に備え、わざとエンジンをきらなかったのだろうか。その間じゅう、彼の傍らには白く
塗られたカワサキの「W1−SA」が今にも止まりそうな低回転で、獣の息遣いのようなアイドリングを
続けていた。こっぴどく叱られながらも、「重量感のある、いい音だな」と密かに私は思った。そしてもうひとつ、
今でも鮮明に覚えていることがある。彼の腰に巻かれたベルトの右側に装着されていた黒い拳銃である。
威嚇するように鈍い光を放つ重そうなそれは、有名なあのスミス&ウェッスンの38口径レボルバーだった。
当時の警官が携帯していた拳銃のケースは、今のフルカバータイプとは違い、銃全体がほとんど剥き出しに
なっていた。冷徹な合理と必然の理念によって研ぎ澄まされたそのフォルムは、見る者にいやがうえにも
死と暴力の匂いを強烈に喚起させ、実に生々しい迫力があったのだ。またその反面、
暗褐色のオーク材が充てられた重厚な銃把などは、確固たるクラフトマンシップに裏打ちされた
美しい手工芸品のような輝きを放ち、男達特有の心理の深い部分に対し強い訴求力を持っていたのである。
それ故、この拳銃だけに憧れて警察官を職業に選んだ者も相当いたのではなかろうか。
晴れて望みをかなえてそれを手にした時、彼らは人知れず恍惚の笑みを浮かべたであろう、と思う。
そして、いよいよ待ちに待った初の射撃練習で実弾を発射しながら、警察官になった喜びを噛みしめたに違いない。
罵声を浴びながらも横目でチラチラと盗み見していると、おまえは何処を見てるんだ、とまたひどく
怒られた。実は小学校の低学年の頃、子供なりに私もこの拳銃に魅了されて、一度でいいから実際に手に触れて
どうしてもその感触を味わいたくなってしまい、交番の前に立っているおまわりさんの周辺をうろついていた時期が
,あったのだ(笑)。
結局、この逮捕劇は「逃走」の罪は見逃してもらい、私はスピード違反だけの処分になった。おかげで
退学どころか停学も免れた。今と違って当時は皆、貧しくはあっても何処かしら人も時代も大らかで情愛に満ち、
橋の下を川は深くゆったりと流れ、劣悪な暴走族もいなければ病的で凶悪な少年犯罪なども皆無に
近かったせいだろう・・・。
とはいっても、この件があってからは道で彼の白バイとすれ違う時、必ず黒いサングラスの奥からジロリと睨まれ、
その度に私の腋の下から冷たい汗が噴き出してきたものだ(笑)。
あれからもう30年以上の歳月が過ぎ、今ではこの転末も青春の武勇伝のひとつになった。
そして、当時の彼の白バイと同型の「W1−SA」は、現在、どうしても手放せない愛車の一台に加わった。
思いが通じるのだろうか、エンジンもすこぶる調子がいい。ただひとつ困ったことには、夕暮れ時などに
これに跨って走っていると時おり、ノスタルジックな気持ちで胸がいっぱいになってしまうことがある。
そんな時、何処からか木霊のように、またあの声が聞こえてくるのだ。
「貴様、親の歳も知らんのか!」
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閑人独語
ひと月程前にテレビで、某大手自動車メーカーの入社式なるものが報道されていた。
巨大なホールに集まった数千人ほどの新入社員を前にして、重役と思しき人物が長々と訓示を述べていたのだが
残念、その内容がとてもお寒かった。いうなれば、苦労しなければ生きた心地がしないという、わが国特有の島国根性
丸出しの堅苦しい講釈のオンパレードだ。その上、なんだかんだいっても若い人の力に頼らなくては絶対やっていけない
くせに、まるで丁稚でも雇ったかのような口ぶりは高圧的で恩着せがましく、哀しいくらいに硬直した精神の貧困を露呈して
おりました。軍隊の朝礼じゃあるまいし、1兆2000億(!)もの経常利益(但し、社員から搾取したサービス残業分を
正しく支払えば、この数値は大幅に減少するはずだが)をあげておきながら、何故、気の利いたジョークのひとつも
飛ばせないのか、不思議でしようがない。笑いは心のマッサージ、笑う角に福来る、で業績も上がるに違いない。
もし、私だったらこんな調子でスピーチをはじたいのだが如何なものか・・・。
「ゴホン。エッ、皆さん、こ〜んばんわ。ポテチン(笑)。わたくし、鍛冶屋系叩き上げ、頭取の本田でございます。本日は
お足元のお悪いところ、遠方より多数、お集まりいただき誠にありがとうございます。さて、堅い話はこのくらいにして、
ここで一発、私の十八番をご披露いたしたいと思います。(いきなりマイクを掴んで)
♪サラリーマンは〜気楽な稼業ときたもんだ〜♪あれ、おかしいな、音はずしちゃった。おい、そこの音声係の堀江!
そう、お前だよ!3っつ音を下げとけとあれほど言っといたのに、何をやっとるんだ。株式ばかりにうつつをぬかし
やがって。そんなこっちゃ、大部屋社員で終わってしまうぞ!あッ、皆さん大変、失礼致しました。この不届き者を
お許しください。実は私、昨夜も例の花街の某ナイトクラブで、コーチンを肴に焼酎をやり過ぎまして、今日は喉の
調子がイマイチ、四日市であります。ゴメンチャイ!(笑)。
え〜、アッ!大事なことを言い忘れておりました。わが社のモットーはなんといっても、能力優先主義であります。
年功序列の悪習はとうの昔、廃止しました。ノーパンシャブシャブなんてもう、古い、古い。シフト・ザ・フユチャーです。
ナニ?幹部が皆、親族だって?それは違いますよ、ここだけの話、あれは節税の為のユーレイ社員なんです。ウホホ。
え〜、なんでしたっけ・・・そうだ、と、とにかく能力がすべてです。社員のプライバシーには一切、口出ししません。
たとえ貴方がホモであろうが、ゲイであろうが、わが社のヒエラルキー(位階制)にはまったく無関係です。心配ご無用!
重視すべきは、あくまでも仕事の結果です。それが証拠に皆さん、ご存知ないでしょうが、現にわが社のトップの
ゴンちゃんは、世間ではこれを変態と申しますが、なんと肛門性愛者であり、常時メンソールを携帯しております(笑)。
そればかりではありません。九州出身で総務部の部長をやっております、あの山崎の奴は、生粋のニンフォマニア
(色情狂)であり、おまけにロリータなんです。重度のエロ合併症です。よーく顔をご覧になって下さい、不気味でしょう?
ほんとにあの野郎、ただもんじゃあ、あ〜りませんよ、です(笑)。それにしても、
いみじくも、誰が言ったのでしょう、「男の下半身に人格なし」とは。まさに言い得てミョー、尾張はニャーであります。
かくいうわたくしも、決して大きな声では言えませんが・・・パンパカパーン、両性具有なんどえ〜す!皆さん、
以上、ご理解いただけたでしょうか。さあ、ここら辺で最後に、万歳三唱で閉めたいと思います。誠に恐縮ながら全員、
ご起立願います。大きな声でお願いしますよ。いいですかー、せーの、マンセー!マンセー!マンセー!」
(注)これを読んで呆れるのはいいけど、怒ったらあかんですよ〜!あくまでも、これはジョークなんです、関西系のエスプリです。念のため。

[ 今月の美女ファイター ]

[ 今月の変人 ]

[ 今月の広島じゃけん ]

いまオラが村で一番輝いている、旬の人、加藤利美さん。うら若き23歳。ご覧の通り、文句無しの美人である。断っておきますが私の愛人ではありません。
残念〜!今度、8月28日に大阪で開催される「大阪グローブ空手道連盟」の大会でデビュー戦を迎える為、毎日、
おとこ顔負けの猛練習を黙々とこなしている。彼女は強いハートと桁外れのガッツを備えたインファイター。姑息な手を使わず、ガンガン打ち合うのが彼女のスタイルである。しかし女性らしい一面もあり、趣味はハーブのプランティングと映画鑑賞。ただ、私が心配なのは彼女は結構、巨乳なのでパンチがそこに当たると、とても痛いんじゃないかということである(笑)。殴られるのを承知で、今度、思い切って聞いてみようと思う。
利美ちゃん、すべての汗は報われるのだ。そして、貴方の喜びと悲しみは、私とともにある。君がいて、そして僕がいる。
孤独の日々はとうに過ぎたのだ。このことを忘れず、その大きな胸に刻んでおいて欲しい。とにかく、おっちゃんもトレーナーとして当日はセコンドに入るから得意の右フックで華麗なKO勝利、たのんまっせー!頑張れよ〜!泣くなよ〜!我らのミリオンダラーベイビー!



決して悪い人ではないけれど、「困った人達」が必ず身の回りにいるものだ。
この松浦さんもそのひとり。今秋で齢56歳を迎えるが、いまだに独身。高校の先輩で早稲田ボーイである。
一頃は県農連でも急進派のブレインとしてその名を轟かせていたらしい。が、ここ数年、彼はある奇妙な妄想に取り憑かれている。それは何かというと、私の町から100KMほど南に降りた所にある沖ノ島という孤島で「原始コミューンを築く」というものである。70年代前後にアメリカンヒッピー文化の流れで、日本でも一世を風靡したあれである。今頃になって何故?常人の私には想像もつかない。メンバーには他に元バリバリの全共闘の面々もいるそうな。お前も一緒に来いと、会うたびにしつこく誘われ、今朝も午前3時まで帰してくれなかった。松浦さんは釣りの達人だし、女いないし、洗濯まめだから、彼ならそこでも充分やっていけるだろう。でも松浦先輩、その前に、5年も滞納してる町内会費を払って下さいよ!居留守はもうやめて下さい。当番の僕は、とっても困ってるんです・・・。貴方のせいで、ボクは民生委員から、カツアゲにあうかもしれないんですう!






おーい!広島の先端企業、「IHI」の3人組!これは・・・「かまくら」ではないか!いいのう、懐かしいのう〜。私も、ご幼少の頃、近所のガキとよく作ったもんじゃよ。あの頃は四国にも雪がぎょうさん積もりよった。中に神棚までこしらえて、餅焼いたりしての〜!クリスマスもお正月もそこでやったもんじゃ。でもな、成人してもかまくらを止められんもんは、ビョーキやっちゅう話やど。
これフロイト流に言うと、胎内回帰願望の表れなんやて。君達、回帰する場所をまちがえとんじゃないか〜!
そんなこっちゃやから、いーつまでたっても彼女ができへんのや。二進法で頭イカレたんやろの。可愛そうに・・・。
それともナニかあ、広島風お好み焼きを食ったらそんなんなるんかー。おまけに、わしゃ〜、広島じゃけんの〜、牡蠣の食いすぎで、脳味噌まで牡蠣になってしもたってか〜。ムホホ。どや、悔しかったら、はよ彼女作って「ホテル丸川」に連れて来い!待っとるで〜!但し、ベッピンやないと泊まらさんぞ〜!
(注)「ホテル丸川」は、当店の3階にあるオフローダーの為の会員制無料宿泊所。広さ30畳。トイレ、シャワーの他、冷蔵庫、ベンチプレス、サンドバッグ、ダンベル一式、ぶら下がり健康器、荒縄、ロウソク、シュラフ2組完備。





[ お断り ]
本新聞はご登場いただいた皆様の御了解を得て作成しております。したがって非難中傷には該当致しません。
それにしても皆さん懐がお深い。さすが港町、ハマの心意気、八幡浜人だ。恐れ入りました。
万が一彼らの気が変わって訴訟という暴挙に及んだ場合は、皆さん私を助けてくださいね。

[ 追記 ] 
啓蒙オフ新聞の第1刊で募集した「びり鯛かまぼこ」大抽選会ですが、当選者が2名も出るのに応募者がたったの
1名(東京にお住まいの中村様のみ!)で、抽選が不成立となり、この号に持ち越されてしまいました。トホホ。
皆さん一体、何を恐れているのでしょう。間違っても食あたりとか絶対ありませんので、勇気を出して、
じゃんじゃんご応募ください。感想を一言、「おもしろない」でも何でも結構です。お願いします。涙の編集人より。

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