ESSAY
 


お店やさんごっこ

今年も年末が近づき、幼稚園でもさまざまな行事を行っています。先週末にいつも通りお店やさんごっこを行いました。子供たちが各クラスで友達や先生とどんな品物を作るか、何を売るお店やさんになりたいかなどと話し合いながら楽しそうに商品を作っています。もちろん、各家庭で不要になった空き箱や袋、包装紙、牛乳パックの箱まで協力いただき、幼稚園に持ってきていただいています。毎年12月になると、階段下の二畳ほどの倉庫は廃材てあふれかえり本当に足の踏み場もない状態になります。

 しかし、子供たちにとっては宝の山に見えるらしく、想像力を働かせては次々廃材を組み合わせ貼り、切り、広げて、お店の品物をつくっていくのです。子供の想像力とはすごいもので、手品のように大人が予想もしないような品物が次々出来上がって行きます。幼児期の子供の想像力を刺激しの伸ばすにはとても適した遊びです。

 お店やさんごっこの当日、どの子もウキウキした表情で登園した順に二階にお店をしつらえ品物を並べています。ついでに、自分が買い手となったとき何を買うかまで品定めをしている様子は大人の世界をそのまま再現したようなものです。

 やがて、待っていた店やさんごっこが始まります。大きな声で「いらっしゃい、いらっしゃい」「やすいよ、やすいよ」と声を張り上げお店やさんになり切った子供たちの中へ、これまた買い物バックに見たてた袋を手に先生たちと作った財布に作ったお金を入れた買い手たちがやってきました。たちまちそこら中が市場になり売り買いが始まります。まさに年末の商店街の雑踏のにぎわいです。この行事はとても素晴らしい経験だと思います。

 子供たちのお店やさんごっこを見ているといくつかのことに気が付きます。ほとんどの子が家族と買い物に行った経験があるから自分の欲しいものをお金と交換でに入れることは知っています。しかし、年少児の中には、まだよく遊びが分かっていない子もいて、作った品物を相手にプレゼントしてしまう場合もあります。また、おつりの概念については、年長児でないと理解できないみたいです。中には、50円が10円5倍と同じであることを分かっている子もいて交換しています。

 このような子供たちの状況を見ていて思うのは、現代に生きる子供たちは、否応なく商品経済社会の影響を受けるものである。物心がつく以前から現在のようだ大量生産、大量消費、大量流通の環境の中で育ってくれば貨幣の持つ経済的意義や商品経済の仕組みなど頭で理解できなくても、肌で感じとり、行動して行くようになるだろうと思う。良い消費者になってほしいと思う。

 しかし、私が1番感じるのはものを買うあるいは所有するということは、観念ではなくて人間の本能あるいは本性のようなものだと思えることである。どの子も、自分の欲しい物を買って所有したときの表情は、快感なのしょう。どの子も一様に偽りでないへ喜びの表情を浮かべています。

 歴史的にみても人間社会の発達の歴史はそのまま経済活動の歴史でもあります。事実、その時代、その時代の体制、特に政治体制はその時代の経済状況により決定されてきたように思えます。つまり、経済が政治を決定してきたのが人間の歴史て゛はないでしょうか。もちろん、これは歴史をみるうえでのひとつの視点であります。

 19世紀末、社会主義思想や共産主義思想が現れました。またそれを目指した国家が建設されています。旧ソビエト連邦や東欧諸国のように共産主義を標ぼうした新しい国家が次々と成立しました。これは別の視点からみると、政治が経済をコントロールするという壮大な歴史上の実験だったとも考えられます。その結果は、国家の停滞、あるいは経済活動の停滞、それに付随するさまざまな人間存在にかかわる問題が現れて、結果的にはその国は崩壊しています。これはとりも直さず、政治による過度経済のコントロールは本来の人間社会のあり方や人間存在のあり方にはなじまないものだと思います。をだからこそ今の子供たちには子供の頃から消費社会の中で生きる消費者として経験と感覚を養ってもらいたいと思います。つまり、本能のままに経済活動をしてほしくないのです。人間本来の欲求に基づく活力ある経済活動と同時にそれをコントロールし良い人間社会を築ける賢い消費者育ってほしいと思います。また、その教育を子供のころから体験させることが大切だと考えます。
 


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