日本医療マネジメント学会愛媛県支部長挨拶


<2020年度 挨拶>

日本医療マネジメント学会愛媛支部長 櫃本真聿
  〜緊急時に備えた 平常時の地域包括ケアシステム構築へのマネジメント〜
当支部活動は10年という一時代を経過し、その成長を振り返るとともに、世の中の急速な変化に対応すべく、その役割の大きさを改めて感じております。そして地域包括ケア時代の医療マネジメントに日々ご尽力いただいている皆様に心から感謝と敬意を表すると共に、今後のますますのご活躍を祈念する次第です。 第11回となる2020年度の学術集会は、大会テーマに「病院(医療施設)の地域貢献」を掲げられ、11月14日(土)に、宮岡弘明院長のもと済生会松山病院において開催することとしております。地域包括ケア時代の医療の在り方として、医療機関が地域にアウトリーチをかけ、地域づくりに積極的に参画し、特に住民のセルフケアの向上や地域力を引き出すなど「地域貢献」に取組むことが期待されています。当学会のこれまでを振り返りさらなる活動の充実に向けて、極めて時期を得たテーマであり、私自身皆様ともに、「王道の医療」について議論できることを心から楽しみにしております。 さて新型コロナウイルス旋風による、我が国をパニックに追い込んだ地球規模のこの非常事態。公衆衛生を専門としてきた私にとって、「水際作戦」「封じ込め作戦」の限界を痛感させられる一方で、セルフケアの重要性を再確認いたしました。エボラ出血熱など世界に脅威を与えてきた感染症であっても、結局は5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)が基本であり、一人一人の感染症基本原則を励行するセルフケア意識が最大の予防策であることは、これまで何度も強調されています。「COVID-19」による感染者が海外に比べ少なかった要因は、日本人の培ってきた清潔意識や行動が功を呈したことは間違いありません。また「医療崩壊」が懸念され、専門医療体制の充実だけでなく、かかりつけ医等による日頃の健康管理ケア等の生活支援ネットワークの重要性についても、考える機会となりました。だからこそ、  またわが国の救急出動件数は年々増加し、特に75 歳以上の救急搬送者数は増加の一途を辿り、救急体制崩壊の要因として指摘されています。救急医療体制を持続可能な状態にするためには、緊急時に迅速かつ適正な対応がとれるよう、平常時から本人や家族の理解と協力のもと、関係機関が協働して整備しておく必要があります。かかりつけ医等の住民の暮らしを身近で支えているネットワークと医療・介護機関等が、行政や住民組織他と連携して患者情報を共有し、急変時に取るべき対応を日常的に把握し、悪化の可能性を継続的に予測しながら寄り添っていくことが大切です。 平常時の体制として構築される地域包括ケアシステムは、セルフケア向上と地域力のエンパワーにより、感染症パンデミックのような緊急時においても、大きな力を発揮するはずです。緊急時を想定しながら、地域包括ケアシステムを構築していくことで、システム自体の深化も図られていくのだと思います。住み慣れた地域で安心して暮らせるまちづくりを実現するために、住民の意識変革を図りながら、平常時から医療マネジメント機能を発揮して、緊急時にも活かせる地域づくりを重視した、医療の地域貢献活動に取組むことが、我々の使命であると改めて感じています。当学会がその一役を果たせるよう、今後とも皆様のご理解ご支援を賜りたいと存じます。
 2020年06月02日


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