日本医療マネジメント学会愛媛県支部長挨拶


<2023年度 挨拶>

日本医療マネジメント学会愛媛支部長 櫃本真聿
長い3年間でしたが、ようやくCOVID-19(コロナ)の呪縛から徐々にではありますが解放されつつあります。この間医療マネジメント分野においても、苦難の経験から多くの学びがありました。一見に元に戻っているようですが、“360度のループ回転”を経て、全く別のレベルに至っており、もうコロナ禍前の状態に戻れないことを痛感しています。コロナがもたらした10年以上とも言われる時代を速めた“チャンス”を、いかに今後の医療マネジメント活かしていくかが問われます。 さて2023年度第13回日本医療マネジメント学会愛媛県支部学術集会ですが、松野剛総会長のもと、済生会今治病院の主催で、9月30日(土曜日)、テクスポート今治で開催する運びとなっております。テーマは「医療DX‐今後の医療と働き方を考える‐」であり、特別講演には、中尾浩一先生(済生会熊本病院院長)をお招きし、「医療DXがもたらすパラダイムシフト〜「価値中心の医療」を探る〜」という演題でお話をいただきます。コロナ禍がもたらした変化を代表するのがDX分野であり、まさに時を得たテーマとして興味深く、3年ぶりの対面での総会で、共に学べることを楽しみにしております。 アナログ情報をデジタル化する「デジタイゼーション」から、プロセス全体もデジタル化し新たな価値を創造する「デジタライゼーション」、そして、その結果として社会的な影響を生み出す「デジタルトランスフォーメーションDX」へ、デジタル技術を社会に浸透させて 人々の生活をより良い状況へ導くツールとして進化してきました。そしてデータの集約による効率化やエビデンス化が進む一方で、パーソナライズ化がますます進行し、個々人に適合した情報がセルフケア支援に活かされていくことでしょう。 既にショッピング分野においては、我々の買い物検索や情報の収集・発信状況から、AI機能が活用され、個々が求めているものを把握・分析し、その行動を後押しするような情報提供が、今や日常的に行われています。それに比べれば、行政や医療・介護分野のDXの立ち遅れは明らかですが、近い将来大きな波がやってくることは間違いありません。自分らしい生き方を実現するために適切な情報が提供され、セルフケアを支援していく方向へと進化していく将来を、ワクワクしながらイメージしています。 我々自身がこの変化を受けとめ、正しく適切に活用していく意識と行動が求められています。例えば、リフィル処方箋は、調剤薬局を拠点として、患者が医療に参画しセルフケア意識の向上を促す狙いがあります。そこに電子処方箋が加わり、「自身の保健医療情報を活用できる仕組み」が拡充されることで、PHR(Personal Health Record)として、個々の患者の状況をより正確に具体的に把握することが可能になります。調剤薬局が「かかりつけネットワーク」に参画し、患者のセルフケア向上へのサポート役を果す重要性を、医療者側・患者側共に理解を深めなければなりません。 少子高齢社会を背景とした、地域包括ケアシステムも働き方改革(健康経営)も、目指している方向は同じであり、端的に示すと「個々人のパフォーマンスの向上」と言ってもよいと思います。すでに多くの企業で着手されていますが、行政はもちろんのこと、医療や介護関係機関においても、「パフォーマンスの向上」を狙いに、チャレンジ・チェンジが必要です。住民・患者が“してもらう主役”ではなく、“参加する主役”として、セルフケア力の向上や地域づくり活動等が全国に普及するよう、DXツールを活かすなど、我々のマネジメント力が発揮されますことを心から期待しています。
                                2023年9月30日


/支部長挨拶一覧表