日本医療マネジメント学会愛媛県支部長挨拶


ご挨拶

急速な少子高齢化、併せて慢性疾病中心の疾病構造の大変化は、従来の病院の役割・あり方にも大きな影響を及ぼしました。 ほぼ完治して退院する従来の病院の景色は一変し、疾病や障害を持ったまま退院せざるを得ない患者の急増が、これまでの医療の限界を著明に表し、根本的な見直しを余儀なくしていると思います。 紹介率の向上や在院日数の短縮化は、医療経営(医療費抑制策)上の急性期病院の至上命令でした。しかし実際には、 医療の限界を前提とした医療依存からの脱却を行わずして、医療機能分化や在院日数の短縮化が、医療費抑制策として押し進められたことは、 住民にとっても医療者にとっても不幸だったと言わざるを得ません。医師不足や地域偏在化とあいまって、医療者の業務量の負担増加や、 医療者と患者・家族とのコミュニケーション不足をもたらし、互いの信頼関係の低下や不信感などが膨らみ、医療者を肉体的にも精神的にも追い詰め、 特に勤務医には“疲弊”という形で顕著に現れました。 “医療崩壊”と指摘されるこの状況を、例え医療者を増やすことで確保が可能であっても、それだけで解決できるとは思えません。 従来の急性疾患をターゲットとした医療フレームに留まることなく、“治す”医療から“求められる”医療へ、そしてその人らしい生活を実現することを目的とした医療へと、 パラダイムシフト求められています。
チーム医療のコアは「患者の真のニーズを実現するために協働する」という、医療者側・患者側両者が目指すべき目標(ミッション)を明確化し共有化することです。 その実現に向けて、保健・医療・福祉を縦割りで見るのではなく、地域のあらゆる資源を生活モデルの観点でマネジメントすることが大切です。 連携のために新しい資源に活路を見いだす必要はなく、むしろ既に取り組んでいることを“ミッション”達成に向けた手段として位置づけ、活用できるかどうかがポイントです。 互いにミッションを確認して、同じベクトルを意識して実践すれば、顔の見える関係にこだわることなく、既に連携はできているといっても良いと思います。 つまりミッションに向けたベクトルの上に、患者・家族が乗っていることを確認しながら、共有した目的達成に向けて、それぞれができることを結集すれば 、 チーム医療は自ずと実践されると確信しています。
前人未踏の超高齢者社会のピークと推測されている2035年は必ずやって参ります。 その対応が遅すぎたなどと懸念するより、「今しかないでしょう!」の精神で取組む姿勢が重要です。 “医療を生活資源に”をミッションに、住民や患者が自らの意志に基づいて、地域で自分らしく安心して暮らせる地域づくりに向けて、 医療自ら他の地域資源と連携・協働することを心から期待しています。

 平成25年3月22日

櫃本 真聿(日本医療マネジメント学会愛媛県支部長)


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