日本医療マネジメント学会愛媛県支部長挨拶


<2014年度 挨拶>
地域包括ケア時代の医療マネジメント

日本医療マネジメント学会愛媛支部長 櫃本真聿

日本医療マネジメント学会愛媛支部会員の皆様、お陰様で当支部も5年目を迎え、会員数・集会参加者数とも順調に伸びております。本年11月には学術集会が、独立行政法人国立病院機構愛媛医療センター岩田猛院長先生の総会長のもと開催されることになっております。本年度も当会の充実発展にご協力いただきますようよろしくお願いいたします。  今年度の診療報酬改定を見ると、少子高齢社会において、医療・介護提供体制の充実から、生活支援システムの重視へと、まさに地域包括ケアシステムの実現に向けた、医療の大方向転換が図られようとしています。診療報酬に応じた自らの医療機関の対応では間に合わず、地域連携を重視し互いの関係を通じてこそ始めて、自院の医療経営や社会貢献につながるということでしょうか。我が国の医療の特徴を踏まえその活用と改善の元で、医療関係者だけでなく、住民はもとより、地域全体で医療・介護など社会保障体制のパラダイムシフトが必要とされています。 さて、欧米では20世紀後半に、医療者自らが、治療や延命における「医療の限界」を住民に表明してきた経緯があります。我が国ではこのような医療への過剰依存を軽減する策をとらないまま、21世紀初頭から医療費抑制を全面に出した医療機能分化や在院日数の短縮化を押し進め、これまで医療の恩恵に依存してきた住民・患者を、一気に不安に落としいれました。一方医療者への質的量的の負担増は、患者・家族とのコミュニケーション不足をもたらし、互いの信頼関係の低下や不信感を招き、医療者は肉体的にも精神的にも追い詰められ、特に“疲弊”という形で現れました。医療費高騰の最大要因は医療の進歩であり、医療崩壊を医師確保対策や総合診療医養成で解決できるとは思えません。 医療制度が“公助”ではなく”共助“であることを再確認して、住民・患者の医療依存の軽減を図り、限られた資源を有効に活用する、地域ぐるみの体制「地域包括ケアシステム」の構築が不可欠だと思います。医療者自身も治すための“してあげる”医療から、その人らしい生活を実現するための“求められる”医療へのパラダイムシフトが急務です。この状況は介護福祉分野においても同様で、依存度の軽減は重要課題です。保健医療福祉がバラバラではなく、一体化・協働して地域資源の総動員化を推し進めない限り解決には至りません。まさに、健康に軸足を置いた地域づくりというヘルスプロモーション理念が根幹であり、医療マネジメント本来の役割を発揮するチャンスです。 今後、医療ビジョン策定を通じて、地域の中で保健医療福祉が完結できるよう、特に「5疾病6事業」に着目しながら、適切な医療ケア等が切れ目なく提供される体制を構築していかなければなりません。疾病の特殊性を超えた、多機関・職種連携による、「共通のプラットホーム」がその基盤に必要です。 “元気高齢者”を支援していく必要性が増しており、生活に軸足をおいた医療ケア体制の整備が重要な課題となっています。住民や患者が自らの意志に基づいて、地域で自分らしく安心して暮らせる地域づくりに向けて、ソーシャルキャピタルの観点から、地域の有限資源を有効にマネジメントする役割は大変大きいと思われます。 当学会支部がその推進の一助となるよう、皆様のご理解ご協力を心から期待しています。

 平成26年6月17日


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