日本医療マネジメント学会愛媛県支部長挨拶


<2016年度 挨拶>

日本医療マネジメント学会愛媛支部長 櫃本真聿
当会も会員の皆様の積極的なご参加とご支援を頂き、8年目を迎えることができました。お陰様で会員増と併せて学術集会の演題は質・量とも充実し発展し続けております。2016年度に開催れます第7回学術集会は、大洲中央病院院長大久保啓二様を会長に、初めて南予地域開催の運びとなりました。関係者の皆様に心から感謝申し上げる次第です。 さて、この地域包括ケア時代においては、“医療崩壊”といわれる行き詰った社会保障制度下で、医療者不足の解消では到底解決のつかない現実を見極め、地域包括ケアシステムが打ち出された重要性を、すべての医療者が十分認識しなければなりません。しかし地域医療ビジョン構想などが打ち出され、地域をあげた思い切った医療ダウンサイジング・機能分担が余儀なくされる中、目前の対応手段に振り回されて目的があいまいとなり、本来「患者のためにあるべき医療」が、「医療のために患者がいる」かのような誤解や混乱が生じています。 地域包括ケア時代が目指す方向は、社会的弱者を一方的にケアするといった、従来の行政や医療・福祉体制を見直し、医療や介護を受けながらでも、地域で自分らしい生活を送りさらに地域に貢献したいという“元気高齢者(障害者)”を、わが国を支える重要な社会資源として育成支援していく方向へ切り替えていくことだと思います。その実現に向けて、医療・介護においては、疾患や障害によって人生や生活が途切れないよう、医療・介護の目的を生活継続の観点に転換することが肝要であり、疾病管理と合わせて生活者それぞれが望む生活に戻すといった機能・役割が求められています。医療・介護が“生活資源”であることを再確認して、“してあげる”から“求められる”へ、生活を見据えたその人らしい“生活に戻す” もしくは望ましい“死に方の支援”といった“生活の質(QOL)・死の質(QOD)”を重視した、チーム医療・介護への展開を図っていかなければなりません。 医療機関や介護施設等はさらなる地域密着型を目指し、入院(入所)前から生活に戻すことを踏まえた体制整備が必要です。診断や治療経過に大きくぶれさされることなく、「つなぐ」連携よりも、入院前の生活を「分断させない」継続が何よりも重要であり、そのためにも、@患者・家族の意向(入院の目的)の明確化と共有化、Aそれに向けた早期からの退院計画、B実現するための支援チーム体制作り、C患者・家族を地域で支える「かかりつけネットワーク」の構築などが求められます。 生活に戻すための医療マネジメントを可能とするには、患者・家族の生活ニーズを掘り起こし共有するための「多職種が集まる場」を確保するとともに、患者・家族はもちろん、多機関・多職種へのエンパワメントを図る「ささやかな介入」が欠かせません。そのリーダーは医師とは限りませんし、むしろ看護師の役割が大きいと思っています。医師は診断・治療を軸足におき、看護師は生活に軸足をおき、互いが両輪となった一体的な基盤のもとに、多職種連携が推進されてこそ本来の医療が提供できるのではないでしょうか。 地域包括ケア時代は、国民皆保険制度をも大きく揺るがす、これまでの医療の歴史的大転換であると認識しています。診療報酬をはじめ国の制度改革ではこの時代を乗り切ることは不可能です。 日本医療マネジメント学会及び愛媛支部の皆様の地域に根付いた活動により、限られた地域資源を総動員し、患者力・住民力そして地域力を引き出して、元気高齢者(障害者)がその人らしい生き方死に方を実現できる地域づくりを目指して、意識啓発やシステム作りに貢献されることを心から期待しています。
 平成28年11月23日


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