「私とゴダイゴ~たびたび~」
H6年卒 大元佳奈
2020年5月12日、ゴダイゴのギタリスト浅野孝已さんの訃報を見てから4時間ほど経ち、少し気持ちが落ち着いてきたのでこの文章を書いている。今、傍らのiPodからは「組曲:新創世記」が流れている。この曲は23分にもなる大曲で、ふだんなかなか聴かないのだが、浅野氏の有名な泣きのギターソロがあるので選んだ。コンサートで何度か見た限り、浅野氏はソロのときステージの前のほう出てくるが、決して客席へアピールしたり派手なアクションをしたりしない。ギターの演奏には詳しくないが、すごいテクニックでクールに弾くスタイルだと思う。(「浅野氏」は愛称でもある)
私のゴダイゴ愛はいろんな機会にさんざん語ってきたが、1975年生まれの私がおそらく3歳くらいでゴダイゴにはまったのではないだろうか。同年代の子はまだ幼児向け番組の音楽を聴いていただろう頃、みんなのうたで聞いた「ビューティフル・ネーム」(1979)でゴダイゴを知り、あるいは「西遊記」のほうが先かもしれないが、「モンキー・マジック」「ガンダーラ」、英語詞だったにも関わらず大ファンになった。タケカワユキヒデは私にとってアイドル。ゴダイゴの凄さもわからないままただただ好きだった。親におねだりして初めて買ってもらったのが「MAGIC CAPSULE」(1979)というライブアルバムだった。B面冒頭の「モンキー・マジック」はテレビで演奏するときと違い、ミッキー吉野の煽るようなシンセサイザーで徐々に盛り上がり、ドラの後、トミー・スナイダーの高い声で雄叫びが入る。ギターがクールにテンポを刻み、タケカワユキヒデの甘い歌声とスティーヴ・フォックスの低いしびれるようなコーラス。このカセットテープは伸びてしまうまで聴き込んだ。
近年、オリジナルメンバー、タケカワユキヒデ、ミッキー吉野、浅野孝已、スティーヴ・フォックス、トミー・スナイダー、吉澤洋治の6名で40年前のコンサートを再現し、年1回東京と大阪で公演していたので何度か行った。飲食のあるビルボードライブは一人ではさみしいので行かなかったが、毎年の楽しみであった。
ほんとうなら2020年5月24日には、日比谷野外音楽堂で「日中友好音楽祭2020瞬間的永恒コンサート」が開かれるはずで、私もはやばやとチケットを手配していたのだが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、3月18日に中止が決定し、泣く泣くチケットを払い戻した。まあでも、11月ごろにはまたコンサートがあるだろうしそれまでの我慢だと思っていた。
2019年11月16日の中野サンプラザのコンサートでは、タケカワさんが「5年後の大阪万博でゴダイゴとして何かしたいね」と言っていて、「ポートピア」(1980)(ポートピア’81のキャンペーンソング)のようなタイアップを期待していた。先行予約のコンサートグッズのおまけのメンバーのサイン入りポストカード(むしろこれが欲しくて購入したのだが)には浅野氏のサインも入っている。タケカワさんの持つ「令和」の字が浮かぶリンゴを指さす浅野氏。まさかその半年後に亡くなるなんて…。
私はタケカワユキヒデのファンだったし、浅野氏はコンサート恒例の物販アピールでも控えめで、(演奏以外では)目立つ方ではなかったが、いつもエキゾチックな服を着て穏やかな印象のかけがえのないメンバーだった。今後、ゴダイゴの活動がどうなるのかは分からないが、もうオリジナルメンバーが揃うことはなくなってしまった。心のどこかが欠けてしまったようで、現実感があまり無い。最近有名人の訃報が相次いでいるが、つい最近まで元気であったはずの人が突然いなくなるのは、驚きが先に立ちなかなか感情が湧いてこない。きっと後から悲しさを実感するのであろう。
自分の記憶のある範囲の人生にはいつもゴダイゴの音楽があった。浅野氏が最後に願っていたように、コロナの早期の終息を祈りながら、大好きなゴダイゴを聴いて哀悼の意をささげたい。
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