特別講演国内留学にて学んだ臨床実地に即した小児一般、小児神経

     講師:愛媛県立中央病院
       小児科医長 岡本健太郎先生

 熱性けいれんの有病率は日本人で8%である。再発の確率は「1歳未満の発症」「親の熱性けいれんの既往」の要注意因子がなければ30%で、要注意因子があれば50%となる。てんかんへ移行する熱性けいれんには、乳幼児期は有熱時けいれんのみで思春期に無熱時けいれんがみられる内側側頭葉てんかんや、乳幼児期に有熱時けいれんを繰り返し徐々に無熱けいれんを伴う乳児重症ミオクロニーてんかんなどがあげられる。要注意因子(発達遅滞や非定型発作、てんかんの家族歴)がある場合、てんかんへの移行率は2-10%となる。
 熱性けいれんを起こした直後の治療として、ジアゼパム投与が行われることが多く、発作の再燃予防に役立つかもしれないが、意識状態の評価が困難になるかもしれない。長期管理として、経過観察、ジアゼパム座剤間欠投与、抗けいれん剤定期内服がある。抗けいれん剤の定期内服は、てんかんへの移行を防げないこと、抗けいれん剤の副作用などから、極力ジアゼパム座剤間欠投与を行うことが望ましいと考える。熱性けいれんをくり返した場合、脳波検査が考慮される。しかし、熱性けいれんでは脳波異常は30-50%に認められる。また、脳波異常の有無とてんかんへの移行は関連がないとされる。そのため、無熱けいれんを伴ったり、長時間のけいれんがなければ、絶対的な脳波検査の適応はないと考えられる。
 脊髄性筋萎縮症(SMA: spinal muscular atrophy)は脊髄前角細胞の変性により生じ、筋力低下を呈する進行性の疾患である。発症時期や重症度に応じて、1型(Werdnig-Hoffmann病)〜3型まで分類される。SMN1遺伝子の欠失により、SMN蛋白が作られないために発症する。SMN2遺伝子は補完的に少量のSMN蛋白を生成し、症状の重症度に関わる。1型では、その大半はSMN2コピー数が2個であり、典型的経過をたどる。それに対し、SMN2コピー数が1個である症例はより重篤であり、出生時発症である。
 提示した症例では出生時から関節拘縮や重度の呼吸不全を伴った。1型の中でも最重症型(0型とも呼ばれる)であると考えた。診断基準では関節拘縮は除外項目に該当するが、本症例は遺伝子検査にてSMAと確定診断した。最重症型の場合、除外項目に該当しうる。そのため、SMAの疑いがあれば遺伝子検査を考慮すべきである。 
 難治性てんかんでは外科手術が考慮され、中でも内側側頭葉てんかんは良い適応である。頭部MRI検査での海馬硬化所見が重視され、核医学検査は補助的検査として利用される。Iomazenil SPECT、FDG-PET、脳血流SPECTなどあるが、それぞれに特徴があり、それを踏まえた上で施行するのが望ましい。特に頭部MRI検査で海馬硬化がない場合、核医学検査の有用性が期待できる。
 新生児発作では、臨床発作と脳波上の発作(脳波変化)に乖離があることが知られている。両方を伴えば「真の新生児発作」となり、治療の対象である。しかし、臨床発作だけでは抗けいれん剤の適応がないこともあるため、発作時脳波や長時間脳波を施行することが望ましい。
 小児科関連のガイドラインは多岐にわたり、網羅的に収集したところ270編に及んだ。当科でのアンケート調査では半数から3/4のガイドラインに有用性が示唆された。また、半数のガイドラインはインターネットで入手が可能である。ガイドラインは臨床でのツールの一つとして、有用と考えられている。当科では可能な範囲で収集し、利用しやすくしている。
 (国内留学での経験を元に各テーマに沿って、お話しをさせていただいた。県立新居浜在勤中は小児科医が減員となり、大変苦しい時期であった。支えてくださった新居浜小児科医会の皆様にこの場を借りて厚く御礼申し上げたい。)

*:元新居浜小児科医会会員