(社)日本小児科学会
小児期からの喫煙予防に関する提言
(平成11年6月27日理事会決定)
最近、日本人成人の喫煙率は低下しているといわれているが、先進国の中ではまだ高く、特に青少年と女性の喫煙の増加を指摘する報告が数多く見られる。さらに、喫煙者の低年齢化が起こり、小学1年生の喫煙例の報告もある。
喫煙は喫煙者本人ばかりでなく、周囲の人の健康に悪影響を及ぼすことは周知のことである。疾病予防の観点以外に環境汚染、火災防止など社会的、経済的観点からも喫煙予防は重要である。
喫煙予防教育は、成人になってからでは遅く、小児期から喫煙の害を教育し、喫煙を防止することが重要である。子どもの喫煙予防は、小児科医の活動や努力のみでは不十分であり、家庭・学校・地域など社会全体で取り組む必要がある。
そこで、小児の健康を守るために、(社)日本小児科学会は、小児科医および社会に対して以下の提言を行う。
提言1:小児科医の喫煙予防活動
妊婦の喫煙が未熟児の出産の原因となったり、保護者の喫煙と乳児突然死症候群をはじめ子どものさまざまな疾患との関連性が報告されている。
さらに、乳幼児の誤飲事故はたばこが最も多い。そこで小児科医は、小児科外来を禁煙にし、日常診療や小児保健活動の中で、積極的に保護者と子どもに喫煙の有害性を教育し、保護者・その家族の禁煙と子どもの喫煙予防を勧める必要がある。
提言2:喫煙予防教育の実施
喫煙予防の教育は、幼児期から始めることが望ましく、家族への喫煙予防の教育も合わせて行うことが望ましい。
学校における喫煙予防の教育は、学習要綱では小学3年生で実施するようになっているが、喫煙予防の教育は小学1年生から実施し、学年に応じて健康教育の一環として毎年、繰り返し行うことが望ましい。
同時に教職員など学校関係者自身も禁煙に努める必要がある。
提言3:たばこの自動販売機の規制
子どもは、たばこを自動販売機から購入することが多い。たばこが手に入り難い環境を作ることは、子どもの喫煙防止の一助となり、子どもに健全な社会環境を提供する観点から、たばこの自動販売機を設置することを規制する必要がある。
提言4:たばこの広告の禁止
広告の理解の出来ない子どもにとって、たばこのテレビコマーシャルなどの広告は喫煙を促すこととなり、子どもの目が届くたばこの広告は禁止する必要がある。
提言5:テレビ放送中などの喫煙場面の規制
ドラマ、スポーツ中継などのテレビ放映中に、しばしば喫煙場面がみられる。テレビの喫煙場面は喫煙を促すこととなり、子どもが見るテレビ放送などのマスメディアでの喫煙場面を規制する必要がある。
(日本小児科学会誌:1999年8月号から)
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