会場風景 (講演中のワイガンド博士と花束贈呈)
スナップ写真 (中川秀和氏撮影) |
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「2001年世界禁煙デーinえひめ」特別講演会が、平成13年5月28日(月)、新居浜市のリーガロイヤルホテルで盛大に行われた。出席者は約700人であった。
アンサンブル・ルスティーのバイオリン・ピアノ演奏のなか、加藤正隆氏(日本禁煙推進医師歯科医師連盟愛媛支部幹事)の司会進行で会は進められた。
初めに、主催者を代表して真鍋豊彦氏(禁煙推進の会えひめ世話人代表)が開会挨拶を述べたあと、「2001年禁煙推進えひめアピール」が大橋勝英氏(日本禁煙推進医師歯科医師連盟愛媛支部代表)によって読みあげられた。
愛媛県健康増進課三木優子課長、日本禁煙協会宮崎恭一会長の来賓挨拶に続いて、映画インサイダーのプロモーション上映があった。
続いて、ジェフリーワイガンド博士が、宮崎恭一氏の通訳で「軽いタバコの危険性と禁煙教育の進め方」と題し特別講演を行った。博士は、映画インサイダーの実在モデルで、元B&Wたばこ会社の科学担当副社長、現在、NPO(SmokeーFree Kids,Inc)を設立し、全米で活躍中である。
質疑応答のあと、振袖姿のお嬢さんと少女から、花束が講師と通訳に贈呈され、会は終了した。
当日の資料として、プログラム、講師紹介、2001年禁煙推進えひめアピール、2001年世界禁煙デースローガン、未成年者喫煙禁止法、自動販売機設置要綱、タバコの警告文書、禁煙デーステッカー、漫画本”たばこってな〜に?”などが配られた。
また、「禁煙推進の会えひめ」の入会お願い、「非喫煙者と未成年の健康をたばこから守る法律」制定署名のお願い、1か月後にオープン予定のイオン(ジャスコ)ショッピングセンターにタバコ自動販売機を設置しないよう求める署名のお願い、ワイガンド博士のNPO「タバコを吸わない子ども達」への募金などが行われた。
特別講演会のあと、別室で、日本禁煙推進医師歯科医師連盟愛媛支部・禁煙推進の会えひめの合同総会が開かれ、山内昜雅新居浜市医師会長・西原洋昂新居浜市教育長の来賓挨拶があった。
続いて開かれた合同懇親会は、中山恵二氏の司会進行で行われ、寺本辰之宇和島中央保健所長の乾杯音頭で始まった。
(世話人:井石安比古、大橋勝英、加藤正隆、高橋洋一、田所広文、寺本辰之、中川秀和、中山恵二、真鍋豊彦)
司会 日本禁煙推進医師歯科医師連盟愛媛支部幹事 加藤正隆
18:45〜記念コンサート アンサンブル・ルスティー バイオリン:仲神友紀子、ピアノ:舛田真代 19:00〜 主催者挨拶 禁煙推進の会えひめ 世話人代表 真鍋豊彦 2001年禁煙推進えひめアピール 日本禁煙推進医師歯科医師連盟愛媛支部 代表 大橋勝英 来賓挨拶 愛媛県保健福祉部健康増進課 課長 三木優子先生 日本禁煙協会 会長 宮崎恭一先生 映画「インサイダー」 プロモーション上映 19:20〜 記念講演 「軽いタバコの危険性と禁煙教育の進め方」 講師: ジェフリー・ワイガンド博士、 通訳 宮崎恭一先生 質疑応答:ジェフリー・ワイガンド 博士、 宮崎恭一 先生 他 |
「禁煙推進の会えひめ」並びに「日本禁煙推進医師歯科医師連盟愛媛支部」の会員一同に代わりまして、一言、開会のご挨拶を述べさせていただきます。
本日は、皆様ご多忙中のところ、「2001年世界禁煙デーinえひめ」の特別講演会にご出席賜り、誠に有難うございます。
また、遠路お出でいただいた特別講演講師ジェフリーワイガンド博士および通訳の労をとられる宮崎恭一先生に心から感謝申しあげます。
タバコに含まれるニコチンには強い習慣性があり、タバコの煙は、喫煙者本人のみならず、その周囲の人たちの健康を損なうことは、今や世界の常識になっています。
ところが、ひとり日本たばこ産業株式会社は、ニコチンの習慣性は勿論のこと、肺がんや心臓病など、人の命を奪う重大な病気の多くが、タバコによって起こることを全く認めようとしていません。
喫煙は大多数が10歳代に始まります。この年齢の子どもは、タバコの恐ろしさを知らず、いつの間にやらニコチンの習慣性、依存性のためにタバコが手放せなくなるのであります。
日本たばこ産業株式会社と外国のタバコ会社は、社運を賭けて、世界各地でタバコ販売に躍起になっています。そのターゲットは若い女性と子どもたちです。狙われているのは、貴方のかわいい子どもさんであり、お孫さんであります。
これら若い女性や子どもたちの多くが、将来、タバコ病で命を奪われます。
本年4月、「健康実現えひめ2010」が策定され、これから10年間に愛媛県の成人喫煙率の半減を目指すことになりました。これは全国的にみても、最も先を行く画期的な計画であります。
しかしながら、この目標値は、今後10年間に新たに成人になる今の10歳代の子どもの喫煙率をゼロにしないと到底達成できません。
そのためには、
第1に教育することです。子どものうちに、繰り返し、タバコの健康被害について教えることです。
第2は環境整備です。環境整備と言いますと、タバコの広告規制と屋外のタバコ自動販売機の撤去が挙げられます。公共の場の完全禁煙、これも大切です。
しかし、最も大切なことは、周りの大人がタバコを吸わないことであります。
医師や学校の先生が吸わないことです。お父さん、お母さんが吸わないことです。
本日のイベントを機に、皆様方お一人おひとりがタバコの恐ろしさについて今一度お考えいただき、家庭、学校、職場で、「タバコを吸わない、吸わせない」、をモットーに、ご協力下さいますよう心からお願いいたしまして、開会のご挨拶とさせていただきます。
1992年、米国連邦環境保護局はタバコ煙をA級発がん物質(注1)と認定し、2000年には米国立環境保健科学研究所も、「受動喫煙の煙」を新たに発がん物質として追加しました。
タバコは史上最大の発がん物質です。またWHOはタバコの煙を環境破壊因子と断定しております。
WHOをはじめ先進各国はタバコの健康被害を深刻に受け止め、拘束力のあるタバコ規制のための枠組み条約の成立に全力を尽くしております。事務局長は、「日本は先進国でありながらタバコ対策は遅れている」と強い懸念を表明しております。
このタバコ対策の遅れのため、「我が国は世界の肺がん大国であり、肺がんが男性の死亡率のトップを占めている」ことをまずもって認識しなければなりません。情報公開と言われる中、タバコの害に関する情報は閉ざされているに等しく、未成年者や女性の喫煙は増加の一途をたどっております。
「タバコの真実をつきつめ、タバコ病(注2)の予防のため、タバコのない社会作りを推進する」。これこそが我々の使命であり社会に求められる課題です。
喫煙者の2人に1人はタバコが原因の病気で命を失うと言われ、喫煙者が70歳までに死亡する割合は、非喫煙者に比べ2倍以上になることも分かってきました。また本人のみならず周りの人達までもが計り知れない被害を受けております。
日本では年間11万人がタバコ関連疾患によって死亡している、将来はこの数字が2倍、4倍になる恐れがあるとWHOから指摘されております。タバコをやめることこそが生活習慣病とがんを予防する最も身近で効果的な方法です。
喫煙者の約7割はタバコをやめたいという気持ちがあります。しかしやめるのが困難な状況があります。習慣性があるからです。タバコの強い習慣性はニコチン依存、薬物中毒そのものなのです。このようなものがはたして「個人の自由な嗜好」と言えるのでしょうか。
我々は喫煙者の禁煙指導にも取り組んできましたが、その対象は成人から高校生、そして今は小・中学生へとますます若年化しており、極めて憂慮すべき現状であります。
愛媛県内だけでも27,000台を数えるタバコの自動販売機は、公共施設や医療機関をも侵食し、街角では小・中学生がいとも簡単にタバコを手に入れています。諸外国では見られない光景です。WHOが推進する「たばこ規制枠組み条約」の議長草案では、18歳未満が利用できる場所での自動販売機設置の禁止が盛り込まれております。また、子ども達は身近な大人や仲間の喫煙、雑誌の広告やテレビドラマでのタレントの喫煙シーンを見てタバコを肯定的にとらえ、憧れ、手にします。青少年の健全育成を図るには余りにも劣悪な社会環境と言えます。
折しも愛媛県が策定した2010年までの長期的健康作り計画「健康実現えひめ2010」では、「成人の喫煙率半減」、「医療機関・教育機関での完全禁煙達成」、「未成年者がタバコを購入できない仕組み作りの確立」、という重要項目が目標として打ち出されました。特に「成人喫煙率半減」を明記したことは全国的にも数少ない画期的な姿勢と評価されます。我々はタバコの社会的問題を世に訴え、この目標達成に向けてさまざまな活動を推し進めます。
2001年世界禁煙デーにあたり、「禁煙推進の会えひめ」と「日本禁煙推進医師歯科医師連盟愛媛支部」は「タバコのない社会」が実現するよう、以下の活動目標を定めアピールといたします。 (注1)A級発がん物質:ヒトにがんを起こすことが証明された物質 (注2)タバコ病:タバコが原因の病い
5月31日の世界禁煙デーに合わせ、「2001年世界禁煙デーinえひめ」が28日、新居浜市内のホテルであった。約700人が出席し、米国たばこ会社元役員が内部告発する映画「インサイダー」のモデル、ジェフリー・ワイガンド博士が「軽いタバコの危険性と禁煙教育の進め方」と題する講演に耳を傾けた。要旨を紹介する。
たばこ会社は、自社の製品が人を殺す可能性があることを50年以上前から知っていた。依存性があり、心臓病、肺結核、うつ、精力減退などの原因になることも。にもかかわらず真理を隠し、事実を曲げ、証拠を隠滅してきた。
私自身が4年3カ月間、たばこ会社の科学担当部門副社長をしていたから言える。
1984年から会社は発がん性のある添加物クマリンを紙巻きたばこに使うことをやめたが、パイプたばこには使い続けていた。
92年にはクマリンがネズミの肺、肝臓にがんを誘発することがはっきりし、私は会社に使用中止を訴えたが却下され、クビになった。
たばこ会社は「ライト」「ウルトラライト」という言葉で、健康に良いかのようにアピールする。ニコチンもタールも少ないという印象を受けるが、依存性になるための必要量は残しているし、実は「ライト」の方が、より多くの毒物を体に入れることも知っているのだ。
実験ではニコチンとタールの含有量が少なくても、実際には軽いたばこほど深く吸うから依存性は強まる。また、「ライト」はフィルターに細かい穴が開いていて、測定器では、ここから空気が混入し含有量が下がる。しかし、実際に人が吸うときはその穴の部分をくわえたり、指でふさいでしまうので、そのようにして測ると20〜30mgのタールと1〜1.2mgのニコチンが検出されるのだ。
たばこ会社は、受動喫煙が、喫煙と同じように被害を与えることも知っている。煙の微粒子は肺の奥深く入り込み、ぜんそくの発作や気管支炎を引き起こす。受動喫煙の発がん性はアスベストと同程度のレベルだ。
会社はたばこを吸う権利があると言い、吸いたくない人を殺してしまう権利まで与えているのだ。
私は今、子どもたちに、たばこ会社の実態を教えている。「死ぬから駄目」ではなく、事実を知ることで、死に至らせるようなものに対してどうするかという態度を養わせるのだ。フロリダではこうした教育の結果、わずか1年間で、子どもの喫煙率が54%も下がったことを知ってほしい。
西之端眼科 園延 美記
去る5月28日、「2001年世界禁煙デ−in
えひめ」が開催されました。その席上、ジェフリー・ワイガンド博士が「軽いタバコの危険性と禁煙教育の進め方」と題した記念講演をされました。とても興味深い講演でしたので、ぜひご紹介したいと思います。
博士は、1990年代に、莫大な資本力と政治力で覆い隠されていたタバコ会社の製品の実態、宣伝販売の戦略を明らかにされ、これにより「タバコ被害裁判」等の動きが活発化し、タバコ会社が莫大な賠償金を払うことになりました。会社の秘密の公開を恐れるタバコ会社の脅しや攻撃に悩みながらの活動の実話が「インサイダー」で映画化されました。当日は、「インサイダー」のプロモーション上映もあり、これは余談ですが、アルパチーノは結構好きな俳優でもあり、ぜひ映画も見てみたいと思います。
講演では、まず、博士がB&Wタバコ会社の科学担当副社長時代に、提出した論文のニコチン依存性に関するページが削除されたこと、ニコチンの依存性、毒性について会社が否定し続けたこと、FDAの勧告で発ガン性のある添加物を紙巻タバコからは除いたものの、味が変わるとの理由でパイプタバコには残したこと等の例をあげて、タバコ会社の安全性を無視した利益追求の経営体質を怒りを込めて話されました。
また、タバコには599種類もの添加物が使われており、子供(!)に受け入れられやすくするためにココアや蜂蜜まで入っているという話には背筋が寒くなりました。まさしく「若い時に釣り上げれば生涯ひっかかっている」のです。タバコの製法について、乾燥させたタバコの葉を細かく刻んで少し加工して紙で巻いてあるくらいに思っていた自分の無知が恥ずかしくなります。
次に、ライト等の名前のついたいわゆる軽いタバコについて、私は、一本に含まれるニコチン含量が少ないのだとばかり思っていたのですが、軽いタバコのフィルターには目に見えないような穴があいていて、機械で吸うと穴から入った空気が混じってニコチンやタールが低く検出されるのです。しかし、人間が吸うときは指と唇で穴をふさいでしまう、つまり、軽いタバコといえども依存性をおこすのには十分な量のニコチンを含んでいるのです。そして、軽いタバコを深く吸うとより依存性に入りやすいのだそうです。また、博士は受動喫煙にも言及され、受動喫煙は吸っている本人と同じくらいの害があり、発ガン性はアスベストとほぼ同じと話されました。このようなタバコの害から子供達を守る為にぜひとも禁煙教育が必要になります。博士は単にタバコは危険というのではなく、どうして死ぬようなことになるのかという知識、そのためにはどうしたらいいか考えさせる教育が大切と言われ、フロリダやミシシッピーでのご自分の体験を挙げながら、子供がタバコを買うのはおかしい、吸うにはおかしいという考えを啓蒙する必要性を強調されました。そして、そのための具体的な方法としてアメリカでは18歳以上のものしか立ち入れない所にしか自販機が設置されないこと、禁煙場所を増やすこと、両親は子供の前では吸わない、モデルとなる人が禁煙すること、教師・警察・医師・宗教関係者が協力する等を挙げられました。
私は、今春から日本禁煙推進医師歯科医師連盟に参加させて頂きましたが、今までタバコの害についての一般的な知識はあっても、禁煙に対してあまり関心がありませんでした。このような無関心と有害性に対する無知が禁煙運動を妨げる一番の原因と思います。以前、ある中学の校長先生からこんな話を伺ったことがあります。何度注意しても学校での喫煙を繰り返す生徒の父兄を呼び出したところ「タバコを吸って何が悪い」と父親に言われあきれかえったとの話でした。こんな極端な例は珍しいとしても、個人の好みの問題だから人に迷惑をかけないように注意すればいいとか、本数を減らせばいいとかといった考えはまだまだ広く浸透していると思います。一人々の意識を変えていく地道で息の長い啓蒙運動が必要だとおもいます。今の私ならその父親にこう言います。「あなたの息子さんは、殺人を犯し、自分自身も自殺しようとしているのに、父親のあなたはなぜ止めないのですか?」
(執筆者の園延美紀先生、編集者の大橋勝英先生のご了解を得て転載させていただきました。)