自然銅

 

 

   

 別子銅山産の「自然銅」である。樹枝状、箔状の産状が多いと書かれてあるが、この標本はほとんど塊状を呈し、小さいながらズッシリとした重量感がある。表面は、特徴的な小さな粟粒の結晶の集合体で覆われ、一部は淡緑色の孔雀石に置換されている。ヤスリで磨くとサビの下から、眩しい銅の輝きが燦然と現れ、古代人も同じように、この輝きを見て「銅」という金属を知ったのだろうなと思い、とても感激したものである。別子銅山でも、上部鉱床の酸化帯に輝銅鉱や赤銅鉱、孔雀石などとともに多量に存在していたと考えられるが、ほとんどは江戸〜明治時代に掘りつくされて、実際にお目にかかることは稀である。もし、残っていたとしても、目利きの鋭いおばさま方(選鉱は昔から女性の仕事である)の「手選」の段階で溶鉱炉直行(溶鉱炉に入れる必要もないが・・)となり、今日まで鉱石として残っているのは極めて幸運であると云わざるを得ない。

 私の手元にある標本は、採鉱の仕事をされていた方が亡くなられ、そのご子息から譲り受けた鉱物標本の中にあったものである。「オヤジは仕事がら別子の鉱物を集めていたけど、ボクは興味もないので差し上げます。要らなかったら、川原にでも捨ててください。」と。・・川原に捨てるなんて、とんでもない!!これは別子銅山の「宝」ですヨ。本当にもらっていいんですね?!大切に保存させていただきます!!、とはやる心を抑えながら、ありがたく頂戴した。