安四面銅鉱2

  

 

 別子銅山産の安四面銅鉱。古くから別子の名物であった。和田維四郎教授の「日本鑛物誌」(明治37年刊)には、「・・伊豫別子産は其黄銅鉱床の間隙に付着し新鮮にして微細なる晶面を現はすものなり。」と記載がある。その成分分析も、すでに明治41年に、別子鉱山の石井幸助氏により為されていることが、岩崎重三先生の名著「銅」に記されている。それによると、「 S 26.80%  Sb 30.54%  As 0.23%  Cu 33.67%  Fe 4.42%  Ag 0.49%  Bi 0.14% 」などとなっている。典型的な安四面銅鉱は、銅分が40〜50%であることを考えると、銅分がやや少な目の感があるが、これはキースラガー鉱床中の熱水鉱床生成物という特殊性が原因しているのであろう。戦後になっても、木下亀城教授の「原色鉱石図鑑」や須藤俊男教授の「原色鉱物岩石図鑑」をはじめ、数多くの鉱物書の一頁を華々しく飾り、名実ともに「愛媛の代表鉱物」であったことはわれわれの大きな誇りである。今はまったくの絶産であるのが寂しい。この標本も稼行当時のもの。あまり粒も大きくなく、発破の影響か、表面の擦過痕が痛々しい“並”の標本ではあるが、光にかざすと小さいながらキラリと妖しく黒光りする、その“こましゃくれた”輝きは、さすがに「名物」の名に恥じない貫禄が感じられる。背面に番号があり、一応、「旧宮久標本」と伝えられている。

 

 さて、ここでは小生の記憶する“別子”産、安四面銅鉱の所在地を列記しておこう。

 

1.        愛媛県立博物館・・5階、第2展示室にある。粒ははっきりしているが、やや小さめ。“並”の標本。

2.        西条市立郷土博物館・・2階展示室にある。保存状態悪く、褐色に変色している。

3.        新居浜郷土美術館・・粒はきれいだが、如何せん、保存が悪い。往年の輝きは失われている。

4.        マイントピア別子・・観光坑道内にある。まず小生の知る限り、愛媛では最良の標本。粒も大きく黒光りしている。

             拝見するのに1200円も要るのが欠点。

5.        徳島県立博物館・・収蔵庫内にあり見学不可。標本はこぶし大。粒も大きい。石膏の結晶と共生している。

6.        生野鉱物館・・三菱コレクションの一環として、多くの鉱物に混じって展示されている。標本は小さく輝きも今ひとつである。

 

 その他、もし、ご存じの方がおられれば、ぜひご教示を乞う次第である。

 お譲りいただける方がおられれば、もっと大歓迎である! 乞う御連絡!!

 

 未確認情報ではあるが、新居浜の「住友金属鉱山」内の某資料室には、安四面銅鉱をはじめ、数多くの往年の別子産稀少鉱物が、人知れずに眠っている棚があるという。住友の厳正な社風からして内部資料を外部に公にすることなどは、まず望むべくもないが、どのような“お宝”が充溢しているのか、できれば一度、この眼で拝見したいものである。