黄銅鉱(富化鉱)

 

 

 

 キースラガー鉱といっても、黄鉄鉱ばかりの低品位なものから、黄銅鉱の結晶をなす”吹寄せ”まで、さまざまの段階がある。この標本は、塊状鉱の中でも特に銅成分に富む富化鉱石である。多分、30%内外の銅を含む優良鉱石で、「上バク」中の「上バク」と考えてよいだろう。その特徴は、光り輝く濃い黄金色と、表面に浮かぶ赤〜赤紫の焼けた様な鮮やかな暈色で、昔から「ナタネ(菜種)バク」または「ベニ(紅)バク」と呼ばれるのは、こういう鉱石を指すのであろう。品位の悪い下部鉱床に移っても、鉱脈がはみ出した様な「ハネコミ」や、褶曲面、中石との境界などに、斑銅鉱などとともに局所的に存在していたという。ちなみに鉱石の右下あたり、鋼灰色に輝いている部分は、粒状の閃亜鉛鉱である。ミネラライトで照らすと、暗闇で美しい黄褐色の蛍光を見ることができる。撮影技術が稚拙なため、その様子をお見せできないのがかえすがえす残念である。

 この鉱石のレベルになると「黄銅鉱」と名付けても何ら差し障りのないところであるが、”マイントピア別子”などで、低品位のキースラガーを、「黄銅鉱」と銘打って今も売られているのは、甚だ心苦しい限りである。別子の名誉のためにもなんとかならないものであろうか?・・手元の標本は、今から20年ほど前、私の友人のK君が、端出場から山根に至る下部鉱山鉄道の線路脇で拾ったもので、多分、運搬貨車から転がり落ちたまま放置されていたのであろう。当時は、こんなものが道ばたで簡単に採集できたのかと思うと悔しくまた羨ましく、そして、なによりも大別子の懐の大きさに改めて感嘆せざるを得ない。