黄鉄鉱

 

  

 

 典型的な黄鉄鉱である。「黄銅鉱の吹き寄せ」とともに地元で購入したものである。鉱床の割れ目に生成するきれいな結晶体で、おみやげ物屋でしばしばみかける、外国産のハデハデな結晶に引けをとらない。多くの結晶は6面体の集合体で条線が数多く見られる。一般に別子銅山では、黄鉄鉱はキースラガーの主要構成員として塊状を呈するか、粒状の小結晶の集合として鉱床に普遍的に存在しているが、このような「吹き寄せ」風の鉱石は少ないのではないだろうか?「日本地方鉱床誌 四国地方」でも「西部の露頭付近の酸化鉱中には孔雀石、珪孔雀石、斑銅鉱、輝銅鉱などの二次風化鉱物が認められるほか、一部では脱銅化された黄鉄鉱のみからなる部分も存在する。」と記されているので、あながち怪しい標本でもなさそうだ。しかし、現在ではズリ場で粘っても、これだけの標本を拾うことはもはや不可能であろうと思われ、その意味では、古典的標本と言わざるを得ない。

 仲間に見せても「え〜、これ、本当に別子の鉱石なの??怪しいな〜。」と眉につばを付けられる。実際、自分が採集したものではないので、そう言われれば反論のしようもないが、さる鉱物専門店のIさんから「別子は大鉱山なので、こんな形態があっても、別におかしくないですよ。」と鑑定を受け、すこし慰められているところである。