ソーダ沸石(槙ノ川)

  

 

 槙ノ川のソーダ沸石。漢字で「曹達沸石」とも書く。放射状に伸びた細い針状、柱状結晶で断面はほぼ正方形。先端の結晶面は緩い傾斜を描く。この標本では透明な方解石と共生している。ルーペで見ると、先端の結晶面も整っておりとても美しい。形態的にはスコレス沸石や中沸石などと紛らわしいが、断面が正方形であることと色合いである程度は鑑別可能であるという。しかし、堀先生の「楽しい鉱物図鑑」には、「・・ソーダ沸石は、中沸石やスコレス沸石とよく似ていて、一つのサブ・グループをつくっている。主成分になる陽イオンがナトリウムのソーダ沸石、カルシウムのスコレス沸石にたいし、中沸石ではほぼ半々に入っている。・・これら三種は独立した種類で、それぞれのあいだはつながっていない。」と記載され、まあ兄弟まで行かなくとも従兄弟程度の血縁は持っていて、小生のようなズボラ愛好者には鑑別もなかなか難しい。加藤先生によると、「一つの針状で、根元がトムソン沸石、中間が中沸石、先が曹達沸石となっているものもあります。」という産状もあるそうで、こうなるともう肉眼鑑別だけではお手上げである。しかし、槙ノ川の場合、このような放射状の針状結晶集合体は、まずソーダ沸石としても問題はないと思われるが、今は立入禁止となって、採集は不可能。お隣の高殿も、マニアの乱掘で立ち入りが厳しく制限されたそうで、愛媛の誇る往年の大産地も過去のものとなりつつあるのは寂しい、の一言に尽きる。

 

一方、愛媛には、槙ノ川、高殿以外にも沸石の産地は多い。そのうち、皆川先生が「愛媛石の会会誌」に、「五良津」の興味深い記事を書いておられるので、ここに紹介させていただく。「・・四国産の中で気になっている沸石が2,3あります。一つは五良津変成帯から石橋先生が見いだしたKタイプの沸石です。結晶片岩中に5cmの放射状集合体をなしています。普通のNa-ソーダ沸石とラメラ組織をなしています。もしかするとK-ソーダ沸石かもしれません。残念ながら露頭ではなく転石からなので、今のところ唯一一個の標本だけです。五良津はまだまだ奥深い鉱物産地です。一層の調査研究の努力が必要です。・・」5cmの結晶集合体とはスゴい。ソーダ沸石といっても侮ることはできない。実際、堀先生によると、ロシアのコラ半島では“家の柱”のようなソーダ沸石も産するそうであるが、わが五良津も世界に冠たる変成岩帯のひとつ。な〜に、負けることはない!これからも巨大な面白い沸石類が発見されることをおおいに期待したいところである。