含銅硫化鉄鉱の鉱脈の割れ目には、しばしば黄銅鉱や安四面銅鉱などの結晶が成長している。東北地方の小坂鉱山や阿仁鉱山などに見られるような立派な結晶は少ないようだが、四面体の黄金色に輝く結晶が、割れ目にギッシリと群生している様子は実に壮観である。別子銅山では、このような結晶を「吹寄せ」と呼んで珍重している。「吹寄せ」とは、いったいどういう謂われがあるのだろう?手持ちの本を調べてはみたが、結局わからなかった。「吹寄せ」には一ヶ所に集める、という意味があり、黄銅鉱が集合しているというほどの意味であろうか?写真でうまく撮れないのが残念であるが、石全体が光線の具合で光り輝く様は、うっとりするほど美しい。熱水の影響で周囲の鉱脈には多くの亀裂が走り、その間にもキラキラした結晶が、あたかも水晶の晶洞のように埋め尽くしている。
マイントピア別子の「観光坑道」内には、別子銅山産のさまざまな「吹寄せ」が展示されている。大きな立派な結晶や、見事に黄金色に光り輝く結晶、さらにアンチモンが混じる安四面銅鉱の黒光りする結晶など、かっての別子の鉱石の奥深さを偲び、今さらながらに感動しつつ飽きることなく眺め続けたのを思い出す。