含銅硫化鉄鉱1(縞状鉱)

 

 別子銅山のもっとも一般的鉱産物である含銅硫化鉄鉱(キースラガー)である。Kieslagerはドイツ語で黄鉄鉱床のことであるが、日本では広義の硫化鉱、特に結晶片岩などの変性岩中に包胎する黄鉄鉱、黄銅鉱、閃亜鉛鉱などの緻密な集合体を称している。別名「別子型鉱床」とも呼ばれて、世界中に、その名を知られている。

 この標本は、黄金色の含銅硫化鉄鉱と、黒っぽい磁鉄鉱が層状に分布している典型的な縞状鉱である。赤い物体は磁石で、磁鉄鉱が強い磁力を有することを示している。黄金色部分も、よく見ると表面が赤っぽい虹色を呈しており、独特の錆色を見ることができる。この錆色が著しいほど銅分が多く、黄銅鉱に近い高品位鉱と判断することができる。別子銅山記念館の上垣館長に鑑定してもらったところ、この鉱石で銅分10%程度ということであった。昔から「トラ(虎)ハク」と伝えられているのは、多分、このような鉱石を指すのであろう。

 鉱石は、知り合いのお父様が、採鉱の仕事をされていた関係で、記念に持ち帰り、ながらく犬小屋の横に転がしてあったものを譲り受けたものである。別子本坑の23番坑道産であると教えていただいた。犬と同居していたとは言え、私たちにとってはかけがえのない宝物で、今は玄関の飾り棚に神々しく鎮座ましましている。