含銅硫化鉄鉱標本1(縞状鉱)と同じ23番坑産の塊状鉱である。典型的なキースラガー標本で、顕微鏡的には、黄鉄鉱を主体とし、その間隙を、少量の黄銅鉱、閃亜鉛鉱、四面銅鉱などが充填しているが、肉眼的には同定が困難な緻密な集合体である。また、鉱山のみやげもの店などでは「含金銀・・」と宣伝されている場合もあるが、その含有量はごくわずかである。別子銅山記念館のお話では、この鉱石で銅含有率は13,4%程度、別子銅山の平均的鉱石よりは、ずっと優良な重要鉱石であるが、標本としては、なんとなく単調で今ひとつ面白さに欠けるのではないか、ということであった。
ちなみに私の故郷、香川県では、「石」と言えばカコウ岩か砂岩であり、山に登っても、石や岩にそんなに感慨を抱くことはなかった。新居浜の、このような金色に輝く「石」は、まさに未知の驚きの世界で、はじめて鉱石を手にしたときの感激は今も忘れることはできない。しかし、地元の人は、いみじくも言う。「そんな鉱石は、当時は道ばたや河原にゴロゴロ転がっていた。別に珍しくもない普通の石だった。そんなもの集めてどうするの?・・・」