住友の煙草盆
そう昔のものではない、住友の煙草盆である。なにかの記念に配られた品物であろうが、その由緒については不明である。圧巻はなんといっても、煙草入れに刻印された「住友井桁」の社章であろう。江戸時代の「泉屋」の屋号に由来するもので、当時からさまざまの社用品に用いられて来たが、現在のこのドッシリとしたデザインに統一されたのは、大正2年(1913年)からという。社員は、住友の祖、蘇我理右衛門が完成させた「南蛮吹き」と同じくらい古いこの社章に対する誇りがことのほか強く、他社の模倣、転用は絶対に許さないとされている。とはいえ、住友に関連する下請け企業や工場、特に新居浜では、なんらかのかたちで、この「井桁」を巧みに取り入れた社章も多く、「当社は、住友に関係しているんですよ。」と無言で印象づける力を今に持っている。また、住友のさまざまな表彰で用いられる「住友メダル」の表は、この「井桁」が刻印されただけのシンプルなデザインで、水戸黄門の印籠に匹敵する力をも内包する、住友グループ全体の象徴でもある。
しかし、最近の同社の記念品を見ると、この「井桁」が裏面に小さく刻印されているのをしばしば見かけるが、小生としては、この煙草入れのように堂々と表に刻んでいるほうが好きである。また、その方がある種の凄みさえ感じられて美しい・・・