斑銅鉱2

 

 これも「はねこみ」の斑銅鉱である。上側の石英部分と、下側の結晶片岩に挟まれた紫色の鉱脈が、おわかりいただけるだろうか?「斑銅鉱1」は黄銅鉱に富んでいるが、これは粒状の黄鉄鉱が散在している。斑銅鉱と黄鉄鉱の共存は普通にみられるが、含銅硫化鉄鉱のそれより黄鉄鉱の粒が大きいのが特徴である。これは銅と鉄との融点の差に起因していると考えられる。自然では不純物も多く、岩漿の酸度によっても大きく左右されるため、単純な考察はできないが、含銅硫化鉄鉱が変性で一度、融解され、徐々に冷却される過程で、まず硫化鉄が析出し、銅分がますます濃縮されて高品位の斑銅鉱となったと考えるのが妥当ではないだろうか?

 この標本は、私がまだ鉱物をほとんど知らなかった頃、ある方からいただいたものである。桐箱に入っていたものの、母岩ばかりめだち、斑銅鉱部分も黒く変色していて、いわゆる低品位「ガリ鉱」だろうと思って、放置していたが、ある日、ひょっとして、とワイヤーブラシで磨いてみると、黒色の下から赤銅色の新鮮な斑銅鉱が現れて、とても感激した思い出がある。なぜ桐箱で大事に保存されていたのか、はじめて理解でき赤面の思いであった。

 博物館の斑銅鉱は、表面が酸化して真っ黒になっているものが多い。あれでは、どこが斑銅鉱なのか理解することはできないだろう。きめ細やかなメインテナンスが望まれる。