マニアの間では有名な、保土野のルビーである。コロナ社の「地学のガイド 愛媛県」には、「・・・5年ほど前に佐々木 基、皆川鉄雄、野戸繁利の3名が別子山村の谷にわけいって薄い赤紫色の鋼玉をみつけ・・・その後同じ場所で、今度はもっと赤色が強い結晶がみつかって“ルビーが別子山村から出る”と新聞が大きく報道しました。」と記されている。皆川先生は、その著「愛媛の鉱物 2000年版」で、「世間をお騒がせしたルビーです。この標本(写真のものとは異なります)は Cr2O3 を0.5wt%含んでおり化学的にはルビーに属すると思われますが、色から判断した場合なんともいえません。だけども透明感があり、紫紅色を呈するなかなかのものと自負しております。」と感慨を込めて述べておられる。「日本の鉱物」(成美堂出版)でも紹介されて全国的に有名となった。緑の角閃岩と、白い灰簾石に埋もれて散在するためか、確かにコランダムの赤色が鮮やかに映えて見えている。
しとやかな高貴な女性の身を飾る美しいルビー。アインシュタインが予測し、1960年にメイマンが初めて発振に成功した20世紀最大の発見といわれるレーザーのロッドとして使われたルビー。暗闇でそっとミネラライトに照らすと、保土野のルビーも深い赤紫に淡く妖しく光る。