チタン鉄鉱(保土野)

 

  

 

 保土野のチタン鉄鉱である。角閃岩を横切る石英脈の中に、鋼灰色の板状、箔状の産状を呈している。チタン鉄鉱の層自体は薄く、一部、褶曲の影響を受けて、弓なりに曲がっているのも面白い。特筆すべきは、ルチルとの共存であろう。やや茶色っぽい塊がルチルである。チタン鉄鉱の化学式が FeTiO3, ルチルは TiO2 であるから、生成時の鉄分の多少によって、同じ条件下で双方の鉱物が出来得ることを示している。蛾蔵山系の北側にあたる五良津谷でも、双方が共存する標本を得ている。

 最近まで、保土野のチタン鉄鉱は、あまり知られていなかったが、道路付け替えの工事現場から多量に産出して、一時、鉱物店にも出まわったようだ。しかし、その工事も完了して、削り取った斜面もコンクリートにより固められ、すでに絶産となったが、五良津に劣らず、保土野の変成鉱物も非常に多彩であることを示す良い標本であると思われる。