黄安華

 

 輝安鉱が長時間に亘って、酸化されると表面が黄色く変色して「黄安華」という物質に変わる。これには湿度などの水分も関係していて、乾燥している屋内などでは黒く変色してゆくのみで、いくら待っても黄色くはならない。反面、ズリ場で拾う鉱石や、旧坑の中では容易に黄安華を見ることができる。長時間、雨風に打たれることが生成の必要条件なのであろう。この黄変は、最初は表面だけであるが、次第に輝安鉱の結晶深部に及んで、あたかも黄安華の結晶のようになる。しかし、これはあくまでも「仮晶」であって、真の「黄安華」の結晶は稀である。

 この標本は、市之川の人家の床下から発見されたものである。多分、記念に持ち帰って隠したまま忘れ去られていたものであろう。床下の湿度と温度が「黄安華」生成の条件を満たしていたと考えられる。標本上部には、輝安鉱に戻そうと、ヤスリかなにかで磨いた形跡があるが、そんなことをしても”後の祭り”で、よけい汚くなるばかりである。内部には輝安鉱の往年の輝きが今も眩しく保たれている。「惜しいな〜、保存さえ良ければ、「頭」付き、20cmの最高の標本になるのに・・」と、ぼやきながら標本箱にもいれずに転がしておいたが、あとで堀 秀道先生著「楽しい鉱物図鑑A」で「・・「輝安鉱のままだったらもっと高価なのに惜しいことだ」という意見もあるが、値段と美観はともかく、希少性からいえばこちらのほうが大きい・・」という一文を見つけて、あわててラベル付き箱にしまい込んだ。