水晶(市之川)1

  

 

 「市之川鉱山 幟立坑」産の水晶。輝安鉱に付随して産出することも多く、この写真のように単独で群生していることもある。現在も第三紀層礫岩の割れ目に米水晶がビッシリと付着しているのを至るところで観察することができる。市之川は四国でも有数の水晶産地なのである。しかしこの標本は、坑内のいわゆるガマ(空洞)に成長しているもので、もはや古典的標本といっても過言ではないであろう。水晶の透明度がいまひとつなのは残念であるが、一抱えもあるほどの大きな標本で、その存在感は充分である。

 ガマにも輝安鉱の成長するものと、そうでないものがあったようである。「市之川地区の歴史」には、伊藤鶴松さんの話として「・・・ガマ(晶洞)にあたったのは、約20年の坑夫生活で3、4回ぐらい。また、マテ(輝安鉱結晶)のついていないスガマにも3〜4回あっている。何年やっても、ガマにあたる坑夫は大勢の中でも珍しく、あたらぬ人の方が多い。」と記されており、思ったほどガマはないのだな〜〜・・・と意外に思うとともに、苦労してやっとガマにめぐり合い、それを開いてみて、この標本のような水晶だけのスガマだったら、私ならガックリしてしばらくは寝込むだろうな〜〜と妙な感慨を抱いてしまうのである。