市ノ川鉱山「大平見坑」にて伊藤春見氏が採取されたもので、左半分の輝安鉱と、右半分の黄鉄鉱が癒合した格好となっている。輝安鉱と思われる部分も、一部、金色の黄鉄鉱がしみ出したように混ざり合い、正確な成分はEPMA法などの定量分析を行わなければ不明である。貝殻状の劈開や虹色の暈色などから、鉄分を含むベルチェ鉱の可能性もあるが、それにしては随分と大きな結晶体である。やはり、安四面銅鉱の方が考えやすいと思われるが、如何であろうか?そのうち、成分分析をしてみようと思っている。
伊藤氏によれば、このような形で存在する鉱石は、大変珍しかったので記念に持ち帰ったとのことである。写真では写っていないが、小さな水晶も付着していて、正確には輝安鉱(のようなもの)、黄鉄鉱、水晶と3種の混合標本で、市ノ川で採取できる3大鉱物が凝縮している面白さがあるという。先日、第6回エクロジャイト国際会議の際、どさくさで鑑定してもらったところ、「私の目からX線は出ていないので・・」と前置きしながらも、閃亜鉛鉱ではないか?とのことであった。・・え〜?市ノ川から閃亜鉛鉱なんて、あまり聞いたこともない。ますます不可解な一品である。