チタン鉄鉱

 

 五良津谷の代表的鉱物である板状のチタン鉄鉱である。角閃岩を横切る細い石英脈に沿って、金属光沢の強い鉛白色の塊として認識される。まさに視覚的には鉄板そのものであり、触覚的にもヒンヤリとした鉄の冷たさを感じ取ることができる。チタン鉄鉱の構造式は FeTiO3 でルチルと鉄との化合物である。一方、ルチルの暗赤色の発色も微量の鉄によるものとされ、同じ成分でもちょっとした条件差でさまざまな鉱物が生成されていくわけである。チタン鉄鉱とルチルが同時に散在している標本も、別子側の保土野で採集されている。写真左では、標本右下の銀色に輝いている部分がチタン鉄鉱である。右側は、それを斜めから写したもので、板状の産状を示しているがおわかりいただけるであろうか?

 「ルチル」の項でも述べたが、最近は採集目的の入山者が多く、川原で見つけるほとんどの角閃岩にもハンマーの跡が見られる。この標本も一抱えほどもある角閃岩の一部をヘツりとったもの。残りの母岩にも、ところどころチタン鉄鉱の細脈が見え隠れしていたので、後日のために抱えて場所を移し、保存しておいたのだが、再度行ってみると跡形もなくなっていた。数個の小さな角閃岩のかけらが散乱しているのみで、多分、目敏い採集者が見つけてごっそり取っていってしまったのだろう。できれば「愛媛石の会」などの仲間で山分けしたかったのだが・・・今さら残念で悔しく思っている。