ギブス石

 四国で唯一のアルミニウム鉱床で知られる香川県坂出市の金山。ここは市街地のすぐ東部に位置する標高280m余りの低山で、山頂は「カンカン石」の名で知られるサヌカイト(古銅安山岩)で覆われている。鉱床は、サヌカイトが風化しラテライト(赭土)化した赤褐色の粘土層として存在し、ギブス石は、その粘土の中に結核状や鉱滓状の固まりとして産出する。新鮮な面は、暗赤色の光沢を有し、確かに精錬滓と紛うようなコロコロした土塊である。息を吹きかけると、著しく「土の匂い(土臭)」がするのも特徴とされる。代表的なギブス石は白色調が多いが、金山産のものは鉄分が豊富なため褐色から赤色を呈するのであろう。粘土部分で30%、ギブス石で50%程度の水酸化アルミニウムを含み、通常のボーキサイトと比較しても遜色はない。

 金山は、昭和19年から20年にかけて住友鉱山によって稼行されたと「日本地方鉱床誌」には記されているが、実際は香川県女子師範学校などの学生の勤労奉仕によって採掘され、住友精錬所に献納するという形をとったと言うことである。太平洋戦争末期、南洋のシーレーンを失った日本にとって、小規模とはいえ、金山は自前でアルミニウムを調達できる貴重な金属資源であったのである。しかし、それも昔。今は「坂出からボーキサイトが採れる。」と言ってみたところで、まともに相手にしてくれる人はいない。