ボドリオ石

 

 愛媛県の誇る代表的鉱物であるボドリオ石。発見当初は玉髄と思われていた。鉱物図鑑ではダトー石またはピンクダトー石とも書かれているが、最近はボドリオ石に落ち着いているようである。安山岩にできる晶洞(ガマという)に魚眼石や沸石を伴って産出する。大きなものは1mを越える晶洞にギッシリ張り付いている姿は実に壮観である。ホウ素を含んでいるのが特徴で、その薄ピンクの色合いは、なかなかチャーミングで棄てがたい味わいを持っている。「槙の川」がもっとも良く知られているが、現在は砕石がなされていないため絶産状態である。これは、国道を挟んでお隣にある「高殿」産のものだが、「槙の川」物に比べると、ややピンクが薄い感があるという。わずかな距離しか離れていないのに、色合いに相違が出るとはなんとも不思議な話である。

 「槙の川」のボドリオ石を有名にしたのは、愛媛石の会の加藤道男氏によるところが大きい。現在、さまざまな博物館やコレクター秘蔵の標本は、加藤氏寄贈のものが多いそうだ。「槙の川の主」と呼ばれた加藤氏も今は亡く、槙の川の砕石場も廃され荒れるに任せているが、ボドリオ石も輝安鉱と同じように過去の遺物となるのかと思うと寂しい限りである。