変種ジルコン
変種ジルコンは、希土類を含むジルコンの総称で放射能を帯びている。この標本は角閃石(黒い部分)の混じる長石中に、小さな十二面体結晶のジルコンが散在するものである。ジルコンは2,3mmの小さなもので、ややわかりにくいが、周囲の長石が放射能で赤く変色する“ハロ”を呈しているので、それと知られる。微量のトリウムやウラニウムを含むため、わが愛用のガイガーカウンター(ベータちゃん)を近づけると、一発で針が振り切れる。馬刀潟の変種ジルコンは灰褐色の不透明な結晶で、岡山県大佐山で採れるような透明な美しいものではない。以前は1cmに及ぶような大きな結晶も採集されたらしいが、今はルーペで見なければならない小さな結晶しか残っていないので、“ハロ”を目安に注意深く探してほしいと思う。
変種ジルコンのうち、錐状の結晶で、曲がった面を持つものを以前は「波方(ハカタ)石」と呼んでいた。「波方」とは、馬刀潟の属する町名(今は「ナミカタ」町という)から名付けられたものであるが、最近はほとんど用いられなくなってしまった。われわれ愛媛県人にとって、これほど寂しいことはない。このほかにも「大山石」や、放射性鉱物ではないが「片山石」など、愛媛とゆかりのある鉱物名が次第に消えてゆくのは本当に悲しく思う。せめて歴史上の誇りある鉱物名として、学生の郷土資料などに詳しく記載し、後世に伝えてもらいたいものだと思う。