スチルプノメレン

  

 

 基安鉱山の含銅硫化鉄鉱標本である。スチルプノメレンを伴う。スチルプノメレンは、脆雲母とも呼ばれ、黒雲母と肉眼的には類似しているが、もろく、ナイフや針などでつついてみると飛び散ることで区別できるという。含銅硫化鉄鉱床の盤肌に緑泥石を伴って結晶片岩中に産する(原色鉱物岩石図鑑)。この標本もまさにその通りの産状で、緑泥石とキースラガーの境界に沿って層状に分布している。四国のキースラガー鉱床でも、スチルプノメレンを伴うところとそうでないところがあり、別子や佐々連などではあまり見かけないが、基安鉱床では、比較的共存しているのが特徴である。ちなみに“スチルプノメレン”とは、ホリミネラロジー解説書によると、ギリシャ語で“黒く輝く”という意味であるという。

 この標本は、基安鉱山近くの渓流の転石で採集品である。今も、基安鉱山には立派なズリが残り、深い谷に崩れ落ちている。旧寒風山トンネル西条出口から、深い谷底を覗けば、“瓜やなすびの花盛り”ならぬ赤茶けたズリが眼に止まるはずである。多少の藪こぎは強いられるだろうが、ぜひ鉱山跡に降り立ち、「スチルプノメレン付きキースラガー標本」を採集していただきたいと思う。