市之川鉱山(山村研究会)

 

 

           公民館(資料室あり)       千荷坑跡

 

 2001年11月11日、入会している「山村研究会」の「市之川鉱山 現地研修会」に出席した。抜けるような快晴。まず、西条市郷土博物館において、世界重要鉱物に登録されている立派な輝安鉱や、鉱山の古写真で予備知識をつけたあと、市之川にむけ出発。そこの公民館で田坂忠利館長や伊藤 勇先生の貴重な講演を拝聴するは・ず・だ・っ・た・・・ところが!数日前から、遠足の前の子供のような興奮とはじめての出席という緊張が災いしたのか、車のキーを車中に閉じこめてしまったのだ。車に乗り出して20有余年。こんなことは一回もなかったのに・・クソ〜!。仕方なく会の方々には先に行っていただき、JAFを呼んで待つこと40分。ドアをあけるまで更に1時間を要してしまった。「このタイプのはなかなか開かないんですよー。」・・「しかし、お前プロだろー!早く開けてくれー!」と叫びたいのをグッと抑えつつ、情けないやら、つらいやら、天を仰いで嘆息することしばし。本当に涙が出てしまいました。自分でやったことなので仕方ないですけど・・。やっと昼過ぎに独り公民館に到着したときには既に講演も終わり、昼餉の真っ最中。かっこ悪いことこの上なく、山川様からビールをいただいたが、さすがに弁当は喉を通らなかった。

 さて、午後に入り鉱山跡でさまざまの説明を受けた。田坂館長に坑道跡や選鉱場跡に案内していただき、実際の輝安鉱も手にすることができた。

本日の研修の中で、特にすごいと思ったのは「露頭」の見学である。市之川鉱山は、概して「横樋(本当は金ヘンに通と書くのだがJISにないのでご了承ください)」と「縦樋」の二つの鉱脈に分かれている。「横樋」は公民館東部の小山を中心とする水平の脈で、衝上断層沿いに発達し、大シキ(シキは金ヘンに甫と書く。これまたJISにはありません)坑、岩屋坑、鰻坑、旭坑、金水坑などが知られている。「縦樋」は断層沿いの垂直の脈で、千荷坑を中心に、大盛坑、沼田坑、大平見坑、今村坑などが公民館の西から南にかけて拡がっている。二つの全く異なる鉱脈が狭い地区に共存しているのは神秘という他ない。露頭は千荷樋の一部と思われるが、左写真のように三紀層の基底礫岩を貫く裂か充填の形で存在しているのが明瞭に理解される。割れ目の灰白色の物質は、当然、輝安鉱自身でありこれだけでも貴重な標本である。現在、鉱山跡には草木が生い茂り、坑道も入ることはできず、露岩にも苔が生え、なかなか生の鉱脈に接することはできないと思っていただけに嬉しさもひとしおであった。これだけでも本日の大チョンボを補って余りある有意義な研修となった訳である。

 ちなみに大英博物館をはじめ世界の著名な研究施設に保存されている輝安鉱の巨晶は、明治12,3年に「横樋」のうち、鰻坑、大シキ坑、旭坑が抜けあった「三角組」という場所から、採掘されたということである。自分が立っている場所から、わずか100mほどの地下にその場所が今も存在するのか、と思うだけで沸き上がる興奮を抑えることはできず、体が震うのを感じた・・・

 午後3時、全ての予定を終了して解散となった。最後に、多大のご迷惑をおかけした「山村研究会」会員の皆様に、心からお詫びをいたしたいと思います。本当にごめんなさい。