佐々連鉱山のカロール鉱である。知る人ぞ知る!愛媛県の誇る本邦の稀産鉱物である。アメリカ・メリーランド州キャロル(Carroll)郡の鉱山ではじめて見出された、コバルトを含む銅鉱石である。「桜井鉱物標本」にも数少ないカラー版で紹介されているが、黄銅鉱の中に点在する鋼灰色の小さな粒であるため、実際に観察しないとよくわからないというのが正直なところであろう。この標本もまったく同じで、自形結晶と言うには、ちょっと躊躇せざるを得ない小さな粒である。しかし、光をうまく反射させると、金色の黄銅鉱とは明らかに異なる妖しい銀白色に輝き、存在感にあふれている。佐々連鉱山でも、特に、高品位な黄銅鉱や斑銅鉱に伴われるため、ズリでの採集は困難と思われる。これも購入品である。ただし、購入時には、カロール鉱の存在が気づかれていなかったため、比較的安価で入手できたのは、ラッキーというほかない。このカタワレがあるはずで、購入した佐々連の鉱石をお持ちの方は、もう一度チェックされたほうが良いだろう。この標本を割れば、さらに新しいカロール鉱が現れるかもしれないが、ちょっとその勇気がでないでいる。