斑銅鉱
「地学研究」という雑誌がある。今から30年ほども前、「佐々連鉱山の鉱石標本販売」という広告が載っていた。小石程度の標本が十種類ほど、きれいなケースに収まっている。その中には「斑銅鉱」の見本もあった。当時、佐々連鉱山は、徳島県の高越鉱山とともにキースラガー鉱床の斑銅鉱見本を入手できる産地としてコレクターの間では有名であった。佐々連地域は富郷向斜の外縁にあたり褶曲変性が強いため、いわゆる「ハネコミ」が発達し、斑銅鉱の産出量もやや多かったためと考えられる。それでも全鉱石量のわずか0.05%程度であると「四国鉱山誌」には記されている。あるいは、ほとんどの鉱山が昭和47年に閉山した中で、昭和50年代まで生き残っていたことも原因かもしれない。
これも典型的な斑銅鉱標本である。斑銅鉱と黄銅鉱が混じりあう様がいかにも自然の妙を感じさせる。背側に紙が貼り付けてあって「斑銅鉱 銅分60%、金泉ヒ 22番坑道」と書かれてある。小生の標本の中でも、産出場所がはっきりと同定できる数少ない一品である。高品位な黄銅鉱や斑銅鉱には、金や銀、カロール鉱なども含まれているので、何回も取り出してはルーペでチェックしてみるのだが、いまだ発見はできていない。皆川先生は、「割ってみるといいよ。」と簡単に言うのだが・・・。ちょっと、もったいなくて・・・