トロゴム石(立岩鉱山)

  

 

 愛媛県北条市、立岩川上流の「立岩鉱山」産の“トロゴム石”。黒い部分は褐簾石である。トロゴム石は黄白色調の粘土状鉱物のため肉眼的にはわかりにくいが、周囲の長石が赤く変色し放射能が強いことがわかる。実際に、わが愛用のガイガーカウンター(ベータちゃん)を近づけると壊れてしまうのではないかと思うほど、一気に針が振り切れてしまう。名前の通り、放射性元素のトリウムを主体とした重要鉱物である。愛媛県では、馬刀潟の「白岩鉱山」とともに戦後、核資源開発を目的にペグマタイトの採掘がなされていたという。大きな褐簾石標本が採れることでも有名であったが、今は荒れ果てたままとなっている。

 この標本にミネラライトを照射すると緑色に輝く部分がある。四国では燐灰ウラン鉱の記述はまだないとのことで「すわ、遂に大発見か!??」とはやる心を抑えつつ、皆川先生に鑑定をお願いしたが、「たぶん違うだろう。」とのこと。確かに燐灰ウラン鉱の、あの眩しいような輝緑色ではないため、納得するとともに少々失望した次第であるが、ではあの蛍光はなんだろう?と今でも疑問に思っている。どなたかご教示いただければ幸甚である。

 核資源に乏しい我が国にあって、四国のペグマタイト鉱脈は、埋蔵量が少ないとはいえ貴重な存在である。また、いつの日か開発が再開される日が来るかもしれない。それが明るい未来であることを信じたい。