痔瘻(じろう) 

 痔瘻は肛門の周囲にできる慢性の化膿性疾患で、昔は結核性が多いと言われましたが、今はそのような説はありません。

 意外なものに生後間もなく、または数ヵ月後の男の子にできるものがあります。針で膿を出すとか遠慮した小さな切開という中途半端な処置では通常は一度で治らず、赤ちゃんをいたずらに何度も泣かすことになり、精神発達上よくありません。理想は1回の切開で治すことです。

 大人の痔瘻は一般的には根治手術をしなければ治りません。火山とよく似たマグマだまりがあって、膿がたまってくると噴火し(排膿)、しばらくはおさまり、またたまってくると噴火する、といった事を繰り返します。

 痔瘻の発生

 解剖生理にありますように、「肛門小窩(クリプト)」から細菌や化膿性物質が入って、肛門腺で化膿する(マグマだまり)ことから痔瘻が始まるので、この侵入口を手術的に治さなければなりません(肛門機能温存術式)。切開や自然破裂で治ったかのようにみえることもありますが、一時的におさまっただけで治っていません。放置すれば複雑化することがあり、また慢性化して10年もたつと癌化の恐れもあります。早期に単純なうちに確実に治しておきましょう。

肛門出口の肛門小窩から菌が侵入

肛門腺が化膿していろいろな方向に進展

膿瘍が大きくなり破裂して痔瘻が完成

      粘膜下及び皮下膿瘍

 左:肛門挙筋上膿瘍 右:高・低筋間膿瘍

  左:座骨直腸窩膿瘍 右:その複雑化

    さまざまな痔瘻のタイプ

 馬蹄(ばてい)型痔瘻:左右前後に進展