近くの高い山に登ってみよう 道後平野から望む山の楽しみ方 いせきこたろう 新書判・カラー80P ¥800+税
坊っちゃんスタジアムの重信川土手から 360°見渡して、お勧めの山をピックアップ
道後平野周辺のおなじみの35山を いせきこたろう氏が紹介 こたろう流、山と里のフィールドノートを一挙公開 ■登山口までの距離が手頃な山 ■登山・散策するための道が存在する山 ■登ったことを説明できる山 ■ 観望地点から見ていろんな方角にある山
“山=登る”だけではない!
山にはいろいろな楽しみ方がある。「山」=「登るもの」という短絡的なイメージは払拭した方がいい。歩かなくても楽しむ手段もある。「山の楽しみ方」というものは実に幅広くて奥深いものである。 道後平野の周りは実にたくさんの山々が取り囲んでいる。その頂点を指折り数えても、両手じゃ当然足りない。折り重なる山に埋もれ全貌が不明確なものまで含めれば百や二百は軽く超える。「遠方遥かに雪を携えた石鎚山」や「松山市民に“お城山”の愛称で親しまれる勝山」などメジャーで識別容易な山もあれば、自宅の近くにありながら名前さえ知らぬ山もある。 遠望ではあまり変わり映えしない山も、じっくり眺めてみれば各々それなりの味がある。中には外観が山名となった、際立つ特徴を有する山もある。まずは、そんな「眺める楽しみ」というものがある。形だけではない。時間帯や四季の移り変わりに応じていろんな顔を見せるもので、「燈台元暗し」とはこのことである。身近なところにも美しい風景が案外潜んでいるものなのだ。 名前がわかれば興味も倍増する。街なかを歩いていても、どこかに遊びに行く途中でも、「あぁ、皿ヶ嶺が見えるよね」というように、名前を呼べばおのずと親しみが湧いてくる。山の名前そのものも興味深いものだ。それはただ漠然と付けられたわけではない。山容、地理的な意味、山岳宗教の存在、歴史的背景…など何らかの意味がある。山名由来の文献記述を探すのはなかなか難しいが、自分なりに想像・推理してみるのも楽しいものだ。 興味が湧けば、さらに「登頂意欲」が湧いてくるってものだ。だが何も山頂到達だけが能じゃない。登山口に至るまでの道中、山に登る最中にも見るべきものはそれこそ山ほどある。草花、景色、路傍の地蔵…。遠方から眺めるだけでは知り得ないものも多い。注意深く目配りすれば、新たなモノとの出合い・新たな発見があるはずだ。現場や現物を見て存在を知り、そして見識を深めること、これもまた大いなる楽しみである。 この本では、以上のような“楽しみ”をご理解いただくために、単に登山コースをガイドするよりは、「山に纏わるあらゆるモノゴト」や「僕の抱いたイメージや雑感」を紹介することに重点を置いている。 山の攻略法としては、道後平野のほぼ中心地点である「坊っちゃんスタジアムの南側の土手」に観望地点なるものを置き、そこからぐるっと360°回転して見渡せる山々を順次紹介していくことにしよう。 このように観望地点を設定することには意義がある。多忙・金欠・体調不良で遠出できないときには、そこに立って山々を遠望することで、登頂した山を回顧したり、未登頂の山の制覇意欲を燃やしたりして気分を慰めることができる。また、観望地点を拠点としていろんな山の形や名前、そしてそれらの位置関係などをしっかり頭に叩き込んでおけば、どこかの山頂に登って周りを俯瞰したとき「どこが見えているのか」がわかり、眺望の楽しみはより一層深まるのである。