[我輩は軍刀にあらず]

愛刀が語る秋山好古の後半生
我輩は軍刀にあらず
高笠原 建
B6判・160P
¥952+税

 司馬遼太郎氏が明治の青春群像を描いた小説『坂の上の雲』には、主役の一人として、愛媛県松山市出身の陸軍大将、秋山好古が登場する。この人物はとてもユニークで、いつも酒ばかり飲んでいて、戦場には軍刀も持って行かない。出来損ないの軍人かというと、そうではなく、男が男に惚れるような高徳の人物で、この将軍のためなら部下たちは喜んで命を投げ出したであろう。
 この好古の腰に吊るされて、その言動を目撃したであろう指揮刀(サーベル)を擬人化し、彼をナビゲーターとして多くを語ってもらうことにした。勿論、この手法は夏目漱石の『吾輩は猫である』のパロディであり、今年は彼が松山を有名にしてくれた小説『坊っちゃん』の発表百年であることを祝って、漱石に敬意を表しつつ使わせていただいた。
 できる限り事実に則して書いたが、所詮は目も耳もないサーベルが言うことであり、中には根も葉もない話も混ざっているが、それはご愛嬌と許していただきたい。

第1章 我輩とご主人様
      指揮刀と軍刀は違うんじゃ 
      忘れえぬご主人様との出逢い
      ご主人様のご結婚は親孝行 
      我輩の晴れ舞台は野外演習 

第2章 日清戦争
      笑い物にされた日本の軍馬 
      船酔いに負けずに軍馬の世話
      待ち切れずに出した発砲命令
      小銃談義も必要じゃろう  
      旅順要塞の探索もしたご主人様
      負けられぬ日本騎兵の緒戦  
      退却戦で高めた信頼と評価  
      大隊名物になった虱潰し   
      大軍に見せかけて勝った蓋平戦
第3章 騎兵の育成
      半年分の給料で部下の凱旋祝い
      笑い話になった戦死の誤報  
      永沼騎兵大尉の大失態    
      軍人ならばこそ命を惜しめ  
      終始一貫が口癖の乗馬学校長   
      名実とも変化した騎兵実施学校 
      寺内教育総監の学校査閲     

第4章 天津時代
      北津事変派遣師団の兵站監   
      外国武官も平気なご主人様   
      提案された日本租界の改良工事
      工兵中尉も驚く土木知識     
      軍人同士の小さな国際摩擦    
      サプライズな外交手腕     
      袁世凱の信頼も得たご主人様 
      不平等条約から日英同盟へ   
      想い出多き天津での別れ    

第5章 開戦準備
      新任務は騎兵第一旅団長     
      驕れるロシア、必死の日本    
      シベリア大演習への招待状    
      ウラジオストクで探索開始    
      圧巻だったロシアのコサック騎兵 
      皇帝の勅許でハバロフスクへ   
      奇跡的に見学できた旅順要塞  
      騎兵将校へのシベリア報告   

第6章 日露戦争
      軍隊組織も知らねばのう   
      開戦後二カ月は出番待ち    
      大苦戦した南山の戦い      
      得利寺での苦しい緒戦      
      果報は寝て待つ作戦         
      野砲を隠しての待ち伏せ       
      裏を取り合った得利寺の戦い     
      決戦を予定していた遼陽会戦    
      袁世凱からの素敵なプレゼント  
      持久戦となった沙河会戦     
      六万の犠牲を出して旅順陥落   
      十倍の敵を迎えた黒溝台の戦い  
      最終戦となった奉天の戦い 
      ご主人様を襲った二つの不幸
      金の切れ目が戦の切れ目

第7章 復員後
      仏前でのお母上との対話
      平和会議での大ハプニング
      近衛師団長で久松伯爵の上官に
      真之死するも公務を優先
      北豫中学校長への就任要請
      校風を一新させた将軍校長
      我慢の末の辞職願い
      臨終の時も心は戦場に
     
      《 秋山好古に関する略年表 》

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