[大洲・内子を掘る]

愛媛出版文化賞受賞
埋もれた人と歴史と文学と
大洲・内子を掘る
澄田 恭一
四六判・376P
¥1700+税

「学校を掘る」に続く、「掘る」シリーズ第二弾!

 愛媛県の南部に位置する大洲市と内子町は、いずれも古い歴史を誇るまちである。しかし、掘り起こすことがなければ、そのまま長い歴史の中に埋もれたままだったかもしれない人物や出来事は少なくない。
 この本は、幕末から明治維新の時期、大洲から京に駆け上って華々しい活躍をした勤王の志士や、新時代の政治や教育の分野を切り拓いた人たち、あるいは時代の激流に抗うことのできぬまま失意のうちに生涯を終えた人など、これまであまり顧みられることがなかった人物に光を当てたものである。また、秘匿された昭和史ともいうべき天神小学校事件にも目を向け、その綿密な調査と熱意によって事実を明らかにしている。
 著者は、愛媛県立高校の社会科教師をしていた人物だが、勤務校となった内子高校で発見したノーベル賞作家・大江健三郎の若き日の作品にも触れ、のちの文学活動に通じる片鱗を嗅ぎ取っています。また、現在住んでいる住居が、俳人で、夏目漱石の弟子としても知られる松根東洋城がかつて住んだ家であったことから、彼の生涯にもスポットを当て、のびやかな山紫水明の地・大洲を詠んだ作品なども紹介している。
 過去の歴史を現代にどう蘇らせ、生かすのか……そのことを静かに語りかけてくる一冊である。

○地域の昭和史発掘
ルポ「二人の先生を探せ」
昭和11年喜多郡天神小学校事件を追う
○大洲の女傑  中野ミツ
大洲に近代文化を「種まいた人」
○初の代議士誕生 有友正親
菅田村から愛媛県会へ、そして帝国議会へ
○俳人 松根東洋城と大洲
大洲尋常高等小学校を卒業した文化人
○維新の先駆け 人見極馬
大洲藩校「明倫堂」の秀才、その短い生涯
○明治維新と巣内式部の悲劇
商人出身の勤王の志士は、なぜ失脚したか
○矢野玄道と上甲振洋
国学者と漢学者の二つの「国事犯事件」
○大洲藩「いろは丸」異聞
「大洲藩史料」に記録された蒸気船「いろは丸」
○近世町絵図からみた大洲城下町
正徳・幕末の大洲「町絵図」の解読
○地域の文学発掘
 1.少年大江健三郎の軌跡
 2.大江健三郎と「文学の里」
 3.「ふるさと文学」散歩

澄田恭一(すみだ きょういち)プロフィール
1941年、大洲市生まれ。近代史文庫会員・大洲史談会理事
主な著書
『愛媛資本主義社会史 第三巻』(近代史文庫・共著)
『おはなし歴史風土記』(岩崎書店・共著)
『ふるさとの伝統産業四国地方』(大平出版社・共著)
『江戸時代人づくり風土記 愛媛版』(農文協・共著)
『学校を掘る-愛媛県立大洲高等学校の歴史と文化-』

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