[段々畑]

写真集
段々畑
原田 政章
B5判・160p
¥3619+税

四国西南部・由良半島の暮らしを写した
貴重な写真集三部作が、復刊!

 古くから人々に奉仕してくれた段々畑は、長い務めを終えて、いま、雑木に覆われた森の中で静かに眠っている。
 そこで働いていたお百姓さんと、昔ながらの伝統行事を大切に守っている方たちを写し続けて半世紀あまり、お話を聞きながらスケッチのつもりで撮った写真が、今では貴重な記録になり、後世に伝承する役割をするとは思ってもいなかった。
 私の写真集としては第三集となる『段々畑』は、激動した戦後の宇和島周辺の暮らしを、昭和30年代を中心に編集したものである。
 当時は、戦前の古い体制から、思想と社会機構が転換した時期であった。昭和年号に近い年ごろの若者が集まると、いつも段々畑や海での労働のあり方、国の将来のことなどを熱っぽく論じあったものだ。
 風化しかけた戦後の時代を写真と文章で偲び、家族みんなで対話していただければ、私にとって最高の幸せである。

B5判モノクロ 156ページ 布張り上製本写真 点数136点
作者による当時の状況を記した詳細な文章も掲載

 生活物資が乏しく、質素、倹約は美徳とされた時代は遠ざかり、今は、不況といわれながら「国民よ、もっと消費せよ」と政府が奨励する飽食で使い棄てのご時世である。
 文化度こそ進んだが、戦後の貧しさを体験していない今の若い人に、平和で豊かな現在の生活の有り難さの分かりようがない。過酷な労働の中で、ささやかな喜びを見つけて感謝の気持ちのあった昔の人とは、感じ方に開きがある。豊かになった分だけ幸せが増えたわけではなさそうだ。
 段々畑の暮らしを撮影した当時は、都会で働く村出身の人たちが、貧しい田舎生活を見られて肩身の狭い思いをしないかと、発表を遠慮していた。今、若い人たちに写真を見せると、みんなが郷土に誇りをもち、都会の人がうらやむ世の中になった。段々畑で働く味のあるお百姓さんの顔を思い浮かべながら写真集を作り、激動した戦中、戦後をふり返ると複雑な思いがする。
 これでやっと、郷土に住む写真人としての貢僅の一端を果たしたようで、肩の荷を下ろした気持ちになった。
 私がお会いしたすべての方の御指導と御協力に、深く感謝しお礼申し上げます。

原田政章プロフィール(宇和島市在住) 
 二科会写真部会員
 愛媛県美術会参与会員
 南予写真協会会員

1926年  愛媛県南宇和郡西外海村に生まれる
1943年  旧制吉田工業学校電気科を卒業
1944年  川崎造船所(株)電気設計課に入社
1945年  海軍対潜学校に特別幹部練習生として入校。由良衛所に勤務、終戦
1947年  宇和島市で南海電業社を創立し集魚灯、バッテリーを営業。
       南伊予の記録写真を撮り始める
1952年  1962年までに二科会写真部(推薦)、ニューヨーク万博(銀賞)国際サロン、
       日米対抗展、朝日カメラ年鑑、全日本報道写真、愛媛県展、その他に出品
1959年  愛媛県展招待作家
1961年  二科会写真部会友。各種コンテスト年間最多入選(全国)
1962年  1973年まで愛媛県展審査員
1972年  二科会写真部会員(審査員)
1975年  第60回二科展写真部で内閣総理大臣賞
1976年  「戦後の宇和島と段々畑の記録」写真203点を宇和島市に寄贈
1995年  写真集『由良半島』で愛媛出版文化賞特別賞。
      「美しい宇和海いつまでも」で愛媛広告賞
1998年  写真集『宇和海』で愛媛出版文化賞
2003年  山本友一氏の伝記『友さん』を出版
2004年  愛媛新聞賞を受賞

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