四国西南部の宇和海を舞台にした、真珠養殖を営む家族の物語
段々畑で麦とサツマイモを作り、海でイワシを獲っていた時代から、真珠御殿が建ち、外車が走る時代へと駆け抜けた宇和海の漁村。その真珠の海を、原因不明のアコヤ貝の大量死が襲った。
物語は10年前、実際に起きた真珠貝の大量へい死を下敷きに、真珠養殖を営む家族や地域がどのように変わっていったかを描く。
漁協の名物組合長や海の環境調査を依頼された大学関係者、地域の変遷を記録し続けてきた写真家など、海をめぐる群像が登場し、この地域の歴史や現状を浮き彫りにしていく。
豊かさを追い求めた先にあったのはなんだったのか─。
シリアスな問題を含みながらも、この地方特有の人々の明るさと、とぼけた語り口が、読む人の心を救ってくれる。 |