フランス・ルネッサンス様式の美しい洋館に秘められた数々の歴史ドラマ
伊予松山は十五万石の城下町。緑豊かな城山の麓に、そこだけが別世界のように浮かんで見える萬翠荘という洋館は、優美で気品ある近代建築物である。高貴さを感じさせるこの館は、旧松山藩主家の久松定謨伯爵が、大正11年、摂政宮の松山行啓に合わせて建てたもの。その後、90年の星霜を経て、平成23年11月、国の重要文化財に指定された。
本書は、建築物としての見どころだけでなく、久松定謨伯爵と、まわりにいた秋山好古、加藤拓川(正岡子規の叔父)など、激動の近代日本にあって大きな仕事を成し遂げた人たちとの人間関係をも描いている。
また、建築家・木子七郎がこの建物にかけた意気込みなど、数々の意匠に込められた数多の歴史ドラマをひもとく。
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