著者3作目となる小説で、愛媛を舞台にした書き下ろしです。
「あとがき」によりますと、三浦さんのお父さんは、東予を管轄する獣医師だったとか。牛や馬の具合が悪くなると、夜中でも眠い目を擦って出かけていったそうで「酒好きで、いい気分で寝ているところを起こされて行くわけですから、辛かったと思います」と獣医師の実態について書いています。
お父さんは絵が好きで、毎年県展に出品し、愛媛県美術協会の会員にもなっていたとか。小説では、別の理由で絵を中断していますが、実際は病気のために筆が持てなくなったそうです。
「私は、小説の一番初めに書かれているスズキのスズライトの助手席に乗って父と一緒に山に出かけ、農家の庭先でサトウキビなどもらって食べていたのを覚えています。
この小説をひと言で言うとしたら『亡き父の回想から始まり、杏子という絵の天才を登場させて作った愛の物語』ということになります」とあります。
絵と、さまざまな人生が交錯し、一枚の絵が不思議な力をもたらす物語です。 |