人生の終焉に……認知症の母の、生と死のドラマ
人は誰しも、人生の終焉を迎えようとするとき、厳粛に、自然に、この世を去りたいと願うものですが、実際にはなかなか困難です。
この小説は、独居老人の母親が認知症を発症し、さまざまなハプニングを起こしながら、ついには施設に入り、その生を終えるまでを描いたものですが、その子どもである二人兄妹の兄は長男としての責任の重さに苦しみ、妹は変わっていく母に戸惑いながらも寄り添い、やがて兄妹は親に対する考えや関わり方の違いから対立するようになります。親の介護、実家の片づけ、空き家問題などは、高齢の親を持つ子ども世代共通の悩みですが、直面して初めてわかる出来事はまさしく小説的で、誰にも起こりうる人生ドラマといえます。
西行の歌の一節をタイトルにした本書に、あなたはどんな思いを抱かれるでしょうか。 |